空き家問題の実態!東京都の行政代執行 9事例 [2022年まとめ]

行政代執行とは、所有者に代わり、行政が適正管理に向けた取り組みを行うことです。道路に越境している木の枝を切ったり、放置されているゴミを撤去したり、倒壊しそうな家屋を解体したりすることができます。何度も改善を要求しているにも関わらず所有者が対応してくれない場合、行政が強制的に敷地に立ち入り、必要な対策を取るというものです。

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空き家の放置を続けるとどうなる?

空き家を放置し続けると、建物や屏等の老朽化による倒壊の危険や、ゴミなどの異臭や害虫の発生によって近隣トラブルにつながります。

このような自体に陥る前に、早期に売却などを含めた対応することが一般的ですが、本人の知らないうちに空き家が相続対象となっていたというケースも多くあり、知らずにそのまま放置し続け、市区町村からの指摘で初めて気付くということもあります。

平成27年5月に空き家特別措置法が施行されたことにより、放置され続けている空き家に対して、行政(市区町村)が強制的に解体を行える、行政代執行が命令できるようになりました。

当然、行政執行前に、行政から空き家対策の指摘やアドバイスがありますが、対応を行わない場合に注意や勧告、指導などが入ります。

その結果、改善が行われない場合、行政執行となります。

この行政代執行ですが、行政が自ら解体や撤去を行い、その費用は所有者へ強制的に請求、徴収をされることになります。

東京都の行政代執行

東京都では、9件の行政代執行(略式代執行含む)が実施されています。
空き家特措法施工前に2件、施工後に9件となります。
所有者が特定出来ずに行わる略式代執行は3件となります。

それでは、実際に行政代執行が行われた9の事例を順番に見ていきましょう。

行政代執行
平成26年(2014年)5月

空き家特措法施工前

東京都内で初の行政代執行となります。

老朽化が進んで屋根が落ちるなど荒れたままになった空き家アパートは平成18年頃からは、近隣から苦情が寄せられていました。
近隣住民は10年前から数回にわたり署名を集めるなど、空き家アパートの処分を大田区に求めていましたが、「私有地だから手が出せない」と門前払いの状態だったそうです。
その後、平成25年4月に「大田区空き家の適正管理に関する条例」が施行され、大田区は所有者に対し条例に基づき改善を求めました。
平成26年4月までに解体するよう通告しましたが、所有者が応じなかったために行政代執行を実施。

行政代執行 平成26年(2014年)12月
空き家特措法施工前

東京都内で2例目の行政代執行となります。

2階建の空き家は、2階部分が崩落し、壁面も傾き隣家に倒れかかっており、別棟は屋根が損壊し柱も大きく傾斜しており、平成20年ごろから通報が寄せられていました。墨田区から義務者に対し対応を依頼してきましたが、対処はされませんでした。

平成26年1月に「墨田区老朽建物等の適正管理に関する条例」が施行されたことを受け、墨田区は義務者に条例に基づき指導や助言等を行いました。

その後、勧告や命令等の手続きを進めましたが、命令の措置期限を過ぎても、義務者による対応が見られなかったため行政代執行を実施。

行政代執行
平成28年(2016年)3月

空き家特措法施工後

空家等対策の推進に関する特別措置法の施工後、東京都初の行政代執行となります。

2階建ての空き家は、外壁の下地が露出し 柱や梁の腐朽も進み不法投棄物の増加により、通報や改善要望が多数寄せられていました。

平成27年7月に指定空き家に認定され、勧告や命令等の手続きを進めました。

所有者は「建物が危険なことは認識して いるが、建物を解体する気力がない。」と所有者として の責任を示さず、不誠実な回答を繰り替えし、改善に応じる姿勢をみせず、命令の措置期限を過ぎても、所有者による対応が見られなかったため行政代執行を実施。

行政代執行
平成28年(2016年)5月

空き家特措法施工後

空家等対策の推進に関する特別措置法の施工後、東京都2例目の行政代執行となります。

平成18年頃より敷地内および建物内でごみの散乱状況が見られ、近隣からも区に苦情が寄せられていました。前面道路は小学校の通学路に指定されており、外壁が一部崩壊状態でありこのまま放置することは危険な状況でした。
品川区は、建物管理者と改善策について話し合いを続けてきましたが、管理者による自主解決が成されませんでした。品川区は建物管理者に対して「敷地内におけるゴミ等の散乱、山積みの状況を解消すること」「外壁および柱を修復すること」「管理者として適正な管理に努めること」として戒告をしましたが、期日までに履行されなかっため、「敷地内におけるゴミ等の散乱、山積みの状況を解消すること」について行政代執行を実施。

行政代執行
平成29年(2017年)1月

空き家特措法施工後

空家等対策の推進に関する特別措置法の施工後、東京都3例目の行政代執行となります。

2階建ての空き家は、所有者が溜め込んだごみや、建物の老朽化により、平成7年から近隣住民の生活に重大な悪影響を与える状態が続いておりました。

庁内関係部署が連携し指導や説得を行ってきましたが、抜本的な解決には至りませんでした。

そして、平成27年に所有者が死亡し、同年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「法」という)」が完全施行されたことを受け、庁内検討会議や学識経験者等で構成される協議会での意見聴取などを経て、行政代執行の実施。

【略式代執行】 
平成29(2017年)1月

略式代執行として、東京都初の事例となります。

所有者が死亡後に空き家となり、その後約2年間管理不全状態が継続し、前面道路側に立木が越境 し、トタン塀も傾斜。

平成28年7月に周辺住民が市に立木の伐採等を要望。

町田市は、固定資産税の税情報や戸籍調査により、法定相続人が不在であることを確認し、所有者が確 知できないと判断。

敷地は通学路に面しており、このまま放置すると通行人や周辺住民に危害を及ぼすことは確実であり、対応の緊急性が極めて高いとして、町田市は、空家等のアンテナ及び軒樋の撤去 、都道沿いのトタン板塀の撤去、都道及び市道沿いの立木の伐採の略式代執行を実施。

【略式代執行】 
平成30年(2018年)1月

略式代執行として、東京都2例目例となります。建物全体の解体では都内初

平成24年11月に、近隣住民から老朽化等により傾斜した建物があると区に通報が入る。

台東区は登記簿(未登記)、固定資産税情報(該当なし)、土地所有者(借地契約なし)や近隣住民への 聞き取り調査を行ったが、建物所有者を確知できないと判断。

建物全体の傾斜が著しく、このまま放置すると建物が倒壊することは不可避で、隣接建物に被害拡大 のおそれがあるなど保安上危険であり、また敷地及び建物内のごみ等による害虫の発生など衛生上 有害なだけでなく、放火による出火や延焼拡大のおそれがあるなど防災上危険であるため、建物の解体(基礎を除く)と敷地内残置物撤去の略式代執行を実施。

【略式代執行】 
令和2年(2020年)1月

平成21年4月に近隣住民から屋根瓦の落下の通報が入り、その後、屋根の崩落が発生。

北区では注意喚起のため、バリケードの設置などを行いましたが、建物内部がむき出しとなっており、所々で外壁が道路側に傾いている状態なっていました。そして、不法投棄と見られる家電製品やごみなどが敷地内に放置されておりました。

北区は不動産登記などで調査を進めたが、建物所有者の所在を確認できなかった。

このため、放置すれば倒壊の恐れがある「特定空き家」の状態にあると認定し、略式代執行を実施。

行政代執行
令和2年(2020年)2月

老朽化し傾斜した危険な状態の空家について、放置されている多量のごみなども含め、 杉並区は平成16年頃から改善するよう行政指導を行ってきました。

空き家の所有者は杉並区の行政指導に全く応じてこなか った。

その後、平成 28 年に法に基づく「特定空家等」と判断し、建物を除却しゴミを撤去す るよう法に基づく指導、勧告、命令を行ったが、所有者は対策を取らなかった。

一部の所有者は土地、建物の所有権を売却したため、新たな所有者に対しても改めて指導から命令に至る法の手続を行ったが、履行期限を過ぎても命令内容を履行しなかったため、このまま「特定空家等」を放置することは著しく公益に反することから、行政代執行を実施。

行政代執行をされないために

空き家の問題解決は、やることが多く、後回しにすると気持ちがどんどん乗らなくなっていきます。

そして問題点が更に増えていき、一人で対処することが出来なくなります。

また、そういった状態で相続がされてしまうと、更に悪循環に陥ってしまいます。

このような状態にならないために空き家は少しでも早く対応することをオススメ致します。

対策としては、大きく分けると下記の3つになります。



①管理:維持管理を適切に行い、近隣に迷惑をかけない。

②活用:賃貸物件や地域貢献の場として転換する。

③売却:必要な方に売却をする。


しかし、空き家の問題は物件の状況や事情によって解決方法や対処方法が大きく異なります。

そのため、足を止めてしまう方が多くいらっしゃいます。

どうしてもご自身の物件のこととなると戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか。

そのような場合は、お住いの地区の役所に空き家窓口や空き家対策が得意な専門会社に相談してみましょう。

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