足立裕志著『部下がみんなついてくる!慕われるリーダーになれる本』まとめ

書店に行けば山のようにあるリーダー本。しかし、とくにゆとり世代の若者を対象にした手引きはなかなかありません。自らもその世代にありながら教育研修会社を経営する足立裕志氏が著したこの本は、刺さる文章が満載です。以下は、この書籍を読んだ私が過去にツイッターに公開した感想のまとめです。

FC2USER749912VGN さん

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「○○世代」の空欄に入る語句は何でしょう、と云う問があれば、ほとんどの方が「ゆとり」と答えるのではないだろうか。

本書はタイトルにこそその文字は見当たらないが、読み進めると早速このタイトルが示している「部下」がゆとり世代の若者たちのことであると気づく。もっとも翻ってみれば、本書を手に取る人は既にゆとり世代の新人教育に疲弊し、彼ら新人類との世代間ギャップにお手上げ状態で本屋を訪ねた上司なのかもしれないが。たとえば私のように。

正直、本書は足立裕志流の実践マネジメント術や、専門的な心理術が語られているというわけではないので、そのあたりを期待した人には少々肩透かしかもしれない。
交流分析のチャートもあるにはあるが、どちらかと言えばマネジメントする側である上司に新人類である彼らの解剖論を説き、彼らを教育するには上司が変わらねばならないと説示する啓発本の印象が濃い。

しかし本書が巧妙なのは、実はこの上司と呼ばれる人々もまた(私を含み)癖の強い「バブル世代」である点をしっかりと踏まえているところだ。一見ゆとり世代の取扱説明書のようで、しっかりとバブル世代の若干ややこしいオジサン世代を懐柔している。

「イマドキの若いやつは」とこぼしてしまう私が、読み終える頃には「今度からトイレはやめて、エレベーターの前で話しかけよう」となっているのだから驚きだ。視点を変えれば、今これを読むあなたが新進気鋭のベンチャー企業を立ち上げようとするゆとり世代や現役世代なら、本書の語り口調は厄介なバブル世代とのコミュニケーションに有用だから読んでおいて間違いない。もちろん、私同様ゆとり世代の対応に困り果てている上司の方々にも。

辛抱がなく、努力を嫌う傾向のあるゆとり世代と、なんでもかんでもゆとり世代という言葉にねじ込み、一絡げに批判してしまうバブル世代。さらに細かく言及すると1960年代後期日本が上がり調子の高度経済成長期に幼少を過ごし、バブル景気真っただ中に就職したバブル世代と、リーマンショックに伴う世界的不況の中に育ち、夢よりも安定をと教育されたゆとり世代、この二つの年代には起こるべくして世代間ギャップが起こっている。

誤解を恐れずに言い切れば、そもそもゆとり世代はバブル世代が嫌いなのかもしれない。
バブル崩壊によって就職活動はかつてないほど冷え込み、希望職など言っていられなかった彼らにとって愛社精神や勤労の喜びなど、あってたまるかと言ってもいい。

しかし多くのマネジメント本では結局、現在も勤労は美徳であり、上司は尊敬されるべき存在として描かれている。それでは当然、マニュアル通りに指導しても若者に届くはずがない。それは、どこまでも傲慢な教育なのだ。あるいは無条件降伏のように若者に媚びることを是とする指南書もある。それでは本当の意味で慕われるリーダーになれるはずがない。どうしてこんなにも現実と乖離した書籍が多いのかと言えば、結局作者が上司世代かゆとり世代なのだ。

ここで本書の著者について、奥付にあった紹介文をもとに少し紹介したい。
著者の足立裕志氏は1981年生まれで2020年現在39歳。16歳で起業、20歳で海外進出を果たし、ビジネスの楽しさ・厳しさを知る。大学在学時に上京しベンチャー企業へ入社、学生さながら営業マンとして活躍。25歳で株式会社心を設立。

以下はこういった書籍にありがちな、やたら誇張した経歴が続くので割愛する。
紹介したかったのは年齢で、上記の通り著者はちょうどバブル世代とゆとり世代の間に生きていることがわかる。すなわちここで言う上司も部下も見てきた年代であり、言わばどちらでもない世代だ。

また著者はその経歴からとにかく好奇心旺盛な印象を受ける。独立するまで、さぞ色々な会社を渡り歩いたのではないか。だからこそバランスのとれた位置から「慕われるリーダー像」を見てきた、或いは描けたのではないだろうか。

結局は人と人。慕われるリーダーとは、第一に慕われる人でなければならない。
本書には、慕われる人になるために必要な寛容さや、時に厳しさ、そういった人間として大切なことが丁寧に書かれている。最後にはそれらの訓示がシンプルであるからこそ、実践できるかが肝心だと書いて締められる。

これを手にした人が著者のプロフィールを調べ、「なんだ、自分よりも若造が書いたものなんてアテになるか」と感じるのは自由だ。しかしもし、いやちょっと待て、このままではなんだかマズイしな、と感じているなら是非迷わずページをめくってほしい。

上司世代の行く末が彼ら曰く「老害」なる現代語に吸い込まれないためにも、あなたが是非、そのページを開くことを願っている。

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