お酒のことわざ・格言・詩歌、酒と文学

古今東西、偉人から庶民まで幅広く愛されてきた酒。文化や生活との関係も深く、多彩な表現でその素晴らしさやリスク・弊害が語られています。酒は百薬の長、酒に十徳あり、醫などの健康や医学に関するものから、ワインはわが血、バッカスなど宗教や神様に関する言葉などのまとめ。

kabusake さん

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<目次>
【1】お酒の長所を表したもの
【2】お酒のリスクや害を表したもの
【3】お酒の飲み方
【4】お酒を飲んだ時の状態を表すもの
【5】個別の酒(のタイプ)への賛辞・言及
【6】お酒と恋愛
【7】その他
【参考】酒の神様、酒と宗教
【参考】酒造に関する言葉
【参考】北大路魯山人
【参考】酒と文学(青空文庫のへのリンク)他

【1】お酒の長所を表したもの

酒は百薬の長

■適度な酒はどんな薬にもまさる効果があるという意。(広辞苑)
■「夫鹽食肴之將、酒百薬之長、嘉會之好」(そもそも塩は食物に最も肝心なもので、酒は多くの薬の中で最もすぐれており、めでたい会合で嗜(たしな)むよきものである。)《漢書・巻二十四下・食貨志下》

酒は憂いを払う玉箒[たまははき]/酒は憂いの玉箒

酒は心配事を忘れさせ,暗い気持ちをぬぐい去ってくれるほうきのようなものだ。
出典:蘇軾[そしょく]の詩『洞庭春色[どうていしゅんしょく]』。
※蘇軾は、中国北宋代の政治家、詩人、書家。蘇東坡[そとうば]。

醫・毉[くすし] ※医の旧字

[意義]病気やけがをなおす、いやす行為又はそれを行なう人。
[字源]会意(かいい。漢字の六書[りくしょ]の一つ。二つ以上の漢字を合わせて一つの字を作り、その意味を合成する漢字の構成法。)。「匸(かくしがまえ)」+「矢」で、矢をかくす容器で、病気などをいやすという意味はない。これに、動作を表す「殳」を加え、「殹(エイ)」とし、矢をかくす動作(医療のまじないか)を表す文字となり、さらに、「酉(酒壺)」を加えて薬酒を醸す業となった。酉に代えて、「巫」を用いる異体字「毉」もあり、これは巫術による医療を表したものであろう。

酒三杯は身の薬

酒は少しなら薬になる。

酒に十の徳あり

独居の友、万人和合す、位なくして貴人と交わる、推参に便あり、旅に食あり、延命の効あり、百薬の長、愁いを払う、労を助く、寒気に衣となる。

(参考)酒には十種の長所がある。百薬の長、寿命を延ばす、憂いを払う、労を助く、旅行に食あり、旅に衣あり、 推参に便あり、万人和合す、位なくして貴人に交わる、独居の友。《酒語録HPより》

【2】お酒のリスクや害を表したもの

傷酒[しょうしゅ]

飲酒過度によりおこる病証を指す。酒の性は熱で毒がある。もし飲酒過量になると、頭暈頭痛・悪心・嘔吐・躁動あるいは昏睡する。治療は和胃醒酒の法によく、縮脾飲、葛花解醒湯などを用いる。もし長期にわたって多量に飲酒しつづけると、脾胃を傷り、胸隔痞塞・飲食減少・大便溏泄をあらわす。治療は健脾利湿の法によく、胃苓湯や五苓散を用いる。脾腎の両虚は胃関煎などを用いる。陰血が傷れて潮熱動血するものは、涼血養陰の法によく、黄芩芍薬湯、清化飲<ともに景岳全書>などを用いる。もし傷酒が甚だしくなると癥積・黄疸・鼓脹などを生じる。

酒は命を削る鉋[かんな]

酒と産[さん]には懲りた者がない

出産には不安や苦痛が伴い、産婦は大変な思いをしなければならないものだが、「一度でこりごり。もう産まない」と言いながら、やはり懲りもせず次の子を産むように、酒飲みも、二日酔いなどで苦しい思いをしても、また性懲りもなく飲むものだ、ということ。

【3】お酒の飲み方

酒は夏月も温めるべし。冷飲は脾胃をやぶる。冬月も熱飲すべからず。気を上せ、血液をへらす

江戸時代の儒学者・貝原益軒は『養生訓』の中で、「酒は夏月も温めるべし。冷飲は脾胃をやぶる。冬月も熱飲すべからず。気を上せ、血液をへらす」として、季節を問わず、熱すぎず冷たすぎない温燗の日本酒の効用を説いた。

酒は燗、肴は刺身、酌は髱[たぼ]

酒は燗、肴は刺身、酌は髱[たぼ]

君子 微醺[びくん]を楽しむ

孔子

酒と女は二合まで

一杯目は健康のため、二杯目は喜び、三杯目は心地よさ、四杯目は愚かさのため

ブルガリアのことわざ

一杯目は羊、二杯目は獅子、三杯目は豚

ユダヤ教の典範『タルムード』

胸につかえるほど食べたり酔っぱらうほど飲んだりするのは、食べ方も飲み方も心得ぬやからのすることである。

『美味礼讃』ブリア・サヴァラン著のアフォリスムより。

酒をとりかえてはいけないというのは異端である。舌はじきに飽きる。三杯目からあとは最良の酒もそれほどに感じなくなる。

『美味礼讃』ブリア・サヴァラン著のアフォリスムより。

飲み物の順序は、最も弱いものから最も強く最もかおりの高いものへ。

食べ物の順序は、最も実のあるものから最も軽いものへ。

『美味礼讃』ブリア・サヴァラン著のアフォリスムより。

【4】お酒を飲んだ時の状態を表すもの

酒が沈むと言葉が浮かぶ/酒口に入る者は舌出づ/酒沈めば話浮く
/酒の終わりは色話

酒飲み、本性違わず/酒の酔い本性違わず

酒極まって乱となる

酒を飲めるだけ飲んだあとは、酔っぱらって喧嘩になる。

酒が酒を飲む(=酒酒を飲む)

酒飲みは、酔えば酔うほどさらに深酒をする。

海よりもグラスのなかで溺れる者が多い

ラトビアのことわざ

酒に別腸あり

『五代史』

酒の中に真あり/酒は本心をあらわす

『格言集』

酒は飲むとも飲まれるな