【なぜ円高になったのか?】安倍首相の辞任にて起こった相場変動をファンダメンタル分析するまとめ

第二次安倍内閣の突然の終焉を受けて日経平均株価が大きく下落したことは記憶に新しいでしょう。実は同時期、為替でも大きな相場の変動が起こっていました。今回は安倍首相の辞任表明によって、どうして円高になってしまったのか、その原因を考察していきます。

rinapple20 さん

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2020年8月28日、安倍首相の辞任表明を受けて日経平均が下落

新型コロナウイルスや東京オリンピックへの対応に注目が集まっていた安倍首相が、持病の悪化を理由に総理大臣の辞任の意向を固めたことを発表しました。

安倍首相は2006年より成立した第1次安倍内閣においても「機能性胃腸障害」を理由に1年間の任期を経て辞任しています。

第2次安倍内閣にあたる今回、安倍首相は2020年8月16日から3日間休みを取りました。都内の自宅で休養後、17日に慶応大学病院に滞在し日帰りの検診を受けています。24日には再び同病院へ受診し、その後28日に辞任の意向を表明しました。

新型コロナウイルスの感染拡大で、今なお大会の開催が危ぶまれている中、「求心力」となっていた首相が表舞台から姿を消す事態。スポーツ関係者にも衝撃は広がり、五輪・パラリンピック開催への不透明感は増すばかり。

先週の日経平均は、1週間で37円下がり、2万2,882円となりました。6月以降、続いてきたボックス圏の上抜けを試しつつあった日経平均ですが、安倍首相辞任でいったん、2万3,000円以下に戻された形です。

安倍首相辞任の報道が流れると、黒田日銀総裁による大胆な緩和が続けられなくなる、との思惑が出て、報道が出る直前に1ドル106.70円だった為替レートは、106.20円まで円高が進みました。

さらにニューヨーク市場で、1ドル105.35円まで円高が進んでいます。

しかし、相場の変動は日経平均だけに留まりませんでした。日経平均株価の下落に伴うように為替は円高方面へ舵を切り始めたのです。

なぜ安倍首相の辞任が円高へ繋がることになるったのでしょうか?

本まとめでは安倍首相の辞任と相場変動の関係性をファンダメンタルの観点から説明し、今後のトレードにおいて注視するべき点を考察します。

寄稿:FXブレイク

日本国の緊急事態に、なぜ円が買われるのか?(=円高になるのか?)

日本が不安定になるような材料が発表されれば、日本円が売られる。
これは非常に理にかなった論理に見えますが、「有事の円買い」という言葉がある通り、日本の情勢を考慮すると一概にはそう言えません。

実際に2020年8月28日には安部首相の辞任を受けて、相場が円高方向へ一気に進みました。実は2011年3月11日東日本大震災の際にも同様のことが起こっており、当時83円で推移していたドル円は79円まで下落しています。大量の円が買われたことによって円高になったのです。

今回円が急騰した理由は、(1)日本の保険会社が海外資産を売却し、円に替えて保険金支払いに充当するであろうというシナリオに沿って、「投機家が円を買い上げたこと」によって生じたとされている。

円高のポイントは海外資産の売却|日本は世界有数の対外資産負債国

安倍首相辞任で起こった円高のポイントとなるのは「日本の対外純資産残高」です。日本は世界2位のドイツ(230兆円)を抑えて341兆円というブッチぎりの対外純資産を保有しています。(平成30年末時点)

対外純資産とは、「対外資産から対外負債を引いたもの」と定義されます。
つまり日本の投資家は自国の資産よりも海外の資産を多く保有しているのです。日本の企業や投資家は外国の資産を買うために円を外貨に替えて、外国の資産を持っています。

日本の対外純資産残高はH30年末で約341兆円。2位はドイツで230兆円程。そう日本は世界でもブッチぎりの1位。世界でも飛び抜けた存在なんだ。
しかも年々記録を更新している。

日本の対外純資産が341,556(341兆円)であり、前年度と比べて12兆円増加していることがわかる。

世界トップの対外純資産保有国である日本で有事が起こるとどうなるか

日本は経済大国アメリカと友好関係の中にあります。
安倍首相は日本国民が騒ぐのを分かっていても、その友好を守るために様々な施策を講じた上で関係性を保持し続けていました。

そんな首相が今回、辞任することとなったのです。

もし次の首相が今の日米友好関係を潰すような人だったら世界情勢はどうなるでしょうか?もちろんアメリカにも影響を及ぼすこととなるでしょう。

その最悪の事態を避けるために日本の企業、投資家は海外にある資産を自国の通貨に換金しようとするのです。

市場関係者は「欧米の投資家の間では、長期政権が終わって日本の政治が不安定化することや、アベノミクスの柱の1つである大規模な金融緩和路線に変化が出ることへの警戒感が意識された。このため、比較的安全な資産とされる円を買ってリスクを避ける動きが出ているほか、投機的な円買いも見られる」と話しています。

出典 ロンドン市場 円高進む 安倍首相辞意で1ドル=105円台前半に|NHK NEWS WEB

したがって次期総理大臣が誰になるか、どのような対アメリカ外交政策を打ち出すかによって今後の相場は大きく変動するでしょう。特に金融緩和政策についての引き継ぎが行われるかどうかは必見です。

菅義偉さん 自民党総裁選 出馬表明
・安倍総理の辞意表明後、熟慮を重ね判断
・アベノミクス(経済財政政策)を責任もって引き継ぎ、更に前に進めていきたい
・日銀との関係(金融緩和政策)は安倍総理と同じように
・拉致問題解決のためにあらゆるものを駆使。安倍総理と気持ちは同じ

先日総裁選に出馬表明をした菅義偉さんは金融緩和政策の引き継ぎを行うことを示唆しています。

世界でも飛びぬけて多い対外資産が外貨から円に移動する

日本は過去からの積み重ねで「世界最大の債権国」という地位を築いてきました。だからこそ、円は安全資産として扱われるわけです。それゆえ「有事の円買い」という現象が起り得ます。

今回の安倍首相の辞任を受けて円高が進んだのは、対外資産を多く持つ日本の企業や機関投資家が外国資産を円に替えたことによって起こりました。

なぜ日本円が安全資産になり得るのか

日本円が安全資産と扱われ「有事の円買い」という現象が起こる理由は、巨大な対外純資産の存在を引き合いに出すことで紐解くことができます。

まず、対外純資産を多く抱えているということを為替の観点から説明しましょう。
例えば日本の企業や投資家が危機に陥り、大量の円が必要となったとき、対外純資産を大量に保有しているということは「有事の際には売却できる外貨を潤沢に持っている」ことと言いかえる事ができます。

したがって理論上では「日本円の通貨価値が大暴落することは少ない」という理解に繋がります。市場では「有事が起こった⇒円に逃げる」というアクションが起きやすい状況があると考えられます。

少なくとも「危なくなったら対外債務国より対外債権国」は議論の余地のない鉄則であり、これに当てはまらないのは基軸通貨国のアメリカくらいのものである(アメリカは世界最大の対外債務国)。

2011年東日本大震災で円高になった理由との関連性

日本の機関投資家が大量の対外資産を抱えていることを念頭におけば、東日本大震災のような「日本に直接影響のある災害」が起こった際の投資家の動きも理解できるようになります。当時の円高の理由としてよく語られている保険会社を例に考えて見ましょう。

保険会社は多くの死者が出た際に大量の円を必要とします。保険会社は外国資産を大量に保有しているため、当然、円が必要になれば外国資産を一斉に円に替え始めます。つまり、大量に円が買われることとなり、円高が起こるのです。

さらに、以上の流れを予測したあらゆる投資家が、投機を見出して(非常に不謹慎なことではありますが)円を買いだし、円高はさらに加速します。

2011年当時はG7中央銀行の介入が起こるほど異例なまで円高が起こりました。(一時は1ドル76円まで買い上げられています。)

日米欧の主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁は18日朝に開いた電話会議で、外国為替市場への協調介入を実施し、円高を阻止することで合意した。東日本巨大地震や原子力発電所事故の影響を受けた急激な円相場の変動に対応する。政府・日銀は合意を受け、同日午前9時から即座に円売り・ドル買い介入に踏み切った。

G7による協調介入は2000年9月にユーロ安を阻止する目的で実施して以来、約10年半ぶりのものだった。協調介入は日本が要請し、日米欧の通貨当局が連携してそれぞれの市場で円・ドル相場を対象に独自に実施した。

なぜ「有事のドル買い」にはならないのか?

「なぜ安定通貨として円が選ばれるのか、ドルは候補にあがらないのか?」という疑問については、アメリカが世界最大の対外債務国である(日本のように対外債権国ではない)ことや、9.11世界貿易センタービルのテロによる「安定の崩壊」を考慮すれば回答することができます。

当時はいまだに「世界情勢が不安になったらドルを買っておけば間違いない」という考えが残っていましたが、歴史に類をみない世界リーダー国のテロ事件によって、ドルを安定資産として保有しておくという考えが消えてなくなったのです。

本来安全資産である米国債もその価値を失い、途方に暮れた投資家が逃げたはけ口が円だったというわけです。

この考えは世界貿易センタービルのテロにより一瞬にして崩壊します。歴史に類を見ない世界のリーダー国のテロ事件は世界情勢の不安=ドルを買うと言う考えを無くしました。
本来安全資産である米国債もその価値を失いかけました。途方にくれた投資家が逃げたはけ口がもう1つの有事である円でした。

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