【薬のまとめ】アクトス錠

成分名:ピオグリタゾン

TAMA1982 さん

23 PV

インスリン抵抗性を改善するチアゾリジン誘導体

ピオグリタゾン塩酸塩はチアゾリジン系のPPARγアゴニストで、インスリン抵抗性を改善し、血糖低下作用を示します。

PPARは核内受容体の一つで、RXRとヘテロダイマーを形成し標的遺伝子のプロモーター領域に結合することにより、遺伝子発現を制御している転写因子です。脂質・糖代謝、細胞増殖、分化などに関与しており、肥満、糖尿病、炎症などとの関連性が高く注目されています。

核内転写因子であるPPARγのアゴニストとして作用し、TNF-αの発現を抑制することでインスリン抵抗性を改善する。また、インスリン受容体に作用してインスリン抵抗性を軽減し、肝における糖産生を抑制し、末梢組織における糖利用を高め血糖を低下させる。

大型の古い脂肪細胞に細胞死をもたらせ、インスリン抵抗性を低下させるホルモン様物質(アディポネクチン)を分泌する小型の脂肪細胞への分化を促進します。

遊離脂肪酸、TNFα、レジスチンを分泌する大型脂肪細胞により、インスリン抵抗性が惹起される。

脂肪細胞は肥大化するとインスリンの働きを悪くする物質を放出するようになります。肥満患者で糖尿病リスクが高まる理由の一つとして、この脂肪細胞の肥大化によってインスリン抵抗性が増大することがあります。

チアゾリジン系薬はこの肥大化した脂肪細胞に作用することで、肥大化した脂肪細胞をいくつかの小さい脂肪細胞へと変化させます。

核内受容体のPPARγに作用し、脂肪細胞の分化を促進、肥大化した脂肪細胞を正常の小型脂肪細胞に置き換えます。

これにより筋肉・肝臓・脂肪での糖取り込みを促進、肝臓で糖新生を抑制し血糖値を低下させます。抗動脈硬化作用を持つアディポネクチンの血中濃度が3倍等に上昇。またマクロファージに対する抗炎症作用や血管内皮機能改善など多くの研究結果が報告されています。

外因性リガンドとしてはピオグリタゾンのようなチアゾリジン系の薬剤があり、これらの薬物によるインスリン抵抗性の改善に関与すると考えられている。

むくみ、心不全、体重増加に注意

尿細管でNaと水の再吸収を促進し、体液貯留傾向を示すため、心不全・浮腫の出現に注意が必要です。

心疾患を合併しやすい高齢者と浮腫の起きやすい女性に注意。15mg/日より開始し、増量時は特に気をつける。浮腫症例は減塩を強化し、かつ少量の利尿薬も考慮します。

1日1回30mgから45mgに増量した後に浮腫が発現した例が多くみられているので、45mgに増量する場合には、浮腫の発現に留意すること。

副作用としては、浮腫、貧血、血清LDH、CKの上昇などがみられます。アクトスにはナトリウムの再吸収を促進する作用があり、これが浮腫の原因ではないかと考えられています。

肥満患者に有効な薬剤で、動脈硬化の予防にも有効だが、体重増加を起こしやすい薬剤なので、体重管理をしっかり行う必要がある。

「小さい脂肪細胞を増やして糖を取り込みやすくさせる」という作用機序のため、チアゾリジン系薬は肥満を助長しやすくなります。

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に有効

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者に対し、食事療法とともに18カ月間ピオグリタゾンを投与したところ、プラセボ群と比べ、肝脂肪率がおよそ60%減少したほか、インスリン感受性が有意に改善されたことが報告された。

過剰なアルコールの摂取がないにも関わらず肝臓に脂肪の蓄積が見られる状態を指す非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は、糖尿病や肥満、インスリン抵抗性との関連が指摘されている。

「NASHの線維化」は有用な代理エンドポイントです。現時点では糖尿病がない人にピオグリタゾンをお勧めしませんが、糖尿病の人でピオグリタゾンが使える人にはNASH治療にピオグリタゾンが有用かもしれません。

薬物で良いと言われているのは、ビタミンE、ウルソ、ゼチーア、アクトスなどです。NASHでは、個々の病例で発症・進展因子が異なるため、画一的治療は困難であり、その人に合った治療戦略を立てることが重要です。

NASHの10~30%は10年以内に肝硬変・肝細胞がんに進展すると言われています。

うつ病や認知症にも有効とされ、現在研究中

武田薬品の糖尿病治療薬「アクトス」で、認知症の発症を遅延させる効果を調べる治験が始まった

インスリンは、〈脳に働いて記憶物質としても重要な役割〉を果たしており、〈脳内のインスリン情報伝達が支障をきたすと、アルツハイマー病になる〉という。

PPARγはミクログリアの状態に影響を与えるため、うつ病や認知症の治療や予防に有益な選択肢となりうる

武田は、米ジンファンデル社(ノースカロライナ州)と組み、アクトスの低用量処方に、アルツハイマーの発症抑制効果があるかどうかを調べる国際共同臨床試験(治験)を実施。

治験が始まった背景には、糖尿病専門の医師が、認知症を併発している患者にアクトスを処方すると、認知症の症状が緩和することがあるとの報告が学会でされたこともある。

膀胱癌のリスクが上昇する可能性も

欧州の統一方針として回収は不要で、注意喚起でよいとし、米国食品医薬品局(FDA)と概ね一致したものの、 12月時点で仏・独での処方制限は続いています。日本では「膀胱癌治療中の投与は避ける」と記載されました。

CNAMTS研究(後向コホート研究、フランス)⇒膀胱癌の発症率がわずかながら有意に高く、本剤は回収措置に。
KPNC試験(前向コホート研究、アメリカ)⇒膀胱癌リスクの有意な上昇はないが、総投与量と期間が増加するとわずかにリスクが高まる可能性という結果に。

ピオグリタゾン(アクトス:武田薬品)も膀胱癌、心不全、骨折リスクが指摘されています。膀胱癌リスクは、「最近の前向き試験では増加なし」の成績ですが、まだ決着がついていません。

外因性リガンドとしてはピオグリタゾンのようなチアゾリジン系の薬剤があり、これらの薬物によるインスリン抵抗性の改善に関与すると考えられている。

  • 1
PR