使用者責任の法的根拠は、次のように考えられています。
「他の人を使って事業を行い活動範囲を広げたり利益を得ているのであれば、その人が何らかの問題を起こし無関係な第三者に損益や損害を与えた場合、その人を使うと決めた事業主が責任を負うべき」
つまり、そもそも事業主(使用者)が他人(被用者)を雇用しなければトラブルも起こらなかったのだから、事業主が被害者に対しての賠償責任を負うのが筋でしょう、ということです。
使用者責任で訴訟になった事例を紹介
使用者責任とは、従業員が業務に際して起こした問題に対して、雇い主が責任を負わなければならないという法律です。今回は使用者責任で実際に訴訟に発展した事例をご紹介します。
委託先が個人情報流出で使用者責任
被告:A社 原告:A者の顧客Bさん 賠償額:3万5000円
A社の顧客のBさんは個人情報が流出して、A社に対して賠償責任を請求。Web管理を委託していたC社の管理ミスが原因。裁判所は委託先の過失と判断して、A社に3万5000円の賠償責任金の支払いを命じた。
受動喫煙で事業主に使用者責任
被告:勤務先の会社 原告:従業員 賠償額:700万円
従業員Bは受動喫煙が原因で化学物質過敏症になる。診断書を提出して改善を求めるが解雇。分煙化後復職したが、再び症状が悪化。裁判所は使用者責任を認めて700万円の支払いを命じた。
加害者である運転者の使用者であっても,その交通事故の加害自動車について「運行供用者」であるといえるのであれば,被害者の方は,運行供用者責任に基づき使用者に対して損害賠償を請求できます。
たとえば,自動車の「保有者」は運行供用者とされており,「保有者」には自動車の所有者も含まれるとされてます(自賠法1条3号)。
保有者とはいえない場合であっても,使用者・雇い主・勤務先が,その自動車の運行について運行支配を有し,その運行によって運行利益を得ているといえる場合には,運行供用者に当たるといえるので,やはり損害賠償責任を負担することになります。
現実に人格権侵害行為を行った上司や同僚は、当然に不法行為責任(民法第709条)を負います。
企業の意思を体し、全会社的行為として行われたと認められる場合には、上司らの行為といえども、その企業の行為そのものと評価されます。
また、使用者は当該行為が使用者自身の行為と評価される場合には不法行為責任(民法第709条)を、使用者意思に基づき管理職を通じて人格権侵害を行った場合には、使用者責任(民法第715条)を負います。
不法行為について時効は3年です。立証責任は従業員側にあります。
会社は、従業員がセクハラ行為を行った場合には、原則として民法715条1項による使用者責任を負い、被害者に対し損害賠償をしなければなりません。
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