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smallhands2 さん

2573 PV

▼洒落にならない怖い話をまとめます。

136 :1:2013/11/07(木) 20:25:55.41 ID:N/XIvReQ0
もう10年くらい前、俺がまだ学生だった頃の出来事。
当時友人Aが中古の安い軽を買ったので、よくつるむ仲間内とあちこちドライブへ行っていた、その時におきた不気味な出来事を書こうと思う。

ある3連休、俺たちは特にすることもなく、当然女っけもあるわけもなく、意味も無く俺、A、Bで集まってAのアパートでだらだらとしていた。
そしてこれもいつものパターンだったのだが、誰と無くドライブへ行こうと言い出して目的地もろくに決めず出発する事になった。

適当に高速へと乗ると、なんとなく今まで行った事の無い方面へと向かう事になり、3~4時間ほど高速を乗りそこから適当に一般道へと降りた。
そこから更に山のほうへと国道を進んでいったのだが、長時間の運転でAが疲れていたこともありどこかで一端休憩して運転手を交代しようという事になった。
暫らく進むと車が数台駐車できそうなちょっとした広場のような場所が見付かった。
場所的に冬場チェーンなどを巻いたりするためのスペースだろうか?とりあえずそこへ入り全員降りて伸びなどをしていると、Bが「なんかこの上に城跡」があるらしいぞ、行ってみようぜ」と言ってきた。

Bが指差した方をみると、ボロボロで長い事放置されていただろう木製の看板があり、そこに「○○城跡 徒歩30分」と書かれ、腐食して消えかかっていたが手書きの地図のようなものも一緒に描かれている。
どうも途中に城跡以外に何かあるらしいのだが、消えかかっていて良く解らない。
時間はたしか午後3時前後くらい、徒歩30分なら暗くなる前に余裕で戻ってこれるだろう。
俺たちはなんとなくその城跡まで上ってみる事にした。

137 :2:2013/11/07(木) 20:26:40.90 ID:N/XIvReQ0
20分くらい細い山道を登った頃だろうか、途中で道が二手に分かれていた。
看板でもあれば良いのだが、あいにくそういう気の効いたものはなさそうで、仕方なくカンで左の方へと進んでみる事にした。すると、先の方を一人で進んでいたAが上の方から俺たちに「おい、なんかすげーぞ、早く来てみろ!」と言ってきた。
俺とBはなんだなんだと早足にAのところまで行ってみると、途中から石の階段が現れ、更にその先には城跡ではなく恐らく長い事放置されていたであろう廃寺があった。

山門や塀、鐘などは撤去されたのだろうか、そういうものは何も無く、本殿は形をとどめているが鐘楼やいくつかの建物は完全に崩壊し崩れ落ちている、本殿へと続く石畳の間からは雑草が生え、砂利が敷き詰められていただろう場所は一部ほとんど茂みのような状態になっていた。
ただ不思議なのは、山門などは明らかに人の手で撤去された様な跡があったにも関わらず、残りの部分は撤去もされず朽ちていてかなり中途半端な状態だった事だ。

時間を確認すると、まだまだ日没までは余裕がありそうだ、俺たちはなんとなくその廃寺を探索することにした。
が、周囲を歩き回っても特に目に付くようなものはなく、ここから更に続くような道も見当たらず、Aと「多分さっきの分かれ道を右に行くのが正解なんだろうなー」と話していると、本殿の中を覗き込んでいたBが「うおっ!」と声を挙げた。

Bの方をみると本殿の扉が開いている。
話を聞いてみると、だめもとで開けてみたらすんなり開いてしまったという。
中は板敷きで何も無くガランとしている、見た感じけっこうきれいな状態で中に入っていけそうだ。
中に入ってみると、床はかなりホコリだらけで恐らくだいぶ長い事人が入っていないのが解る、なんとなくあちこちを見回していると、床に何か落ちているのが見えた。
近付いてみると、それはほこりにまみれ黄ばんでしわくちゃになった和紙のようで、そこにはかなり達筆な筆書きで「うたて沼」と書かれていた。



138 :3:2013/11/07(木) 20:27:36.77 ID:N/XIvReQ0
なんだなんだとAとBも寄って来たので、俺は2人に紙を見せながら「うたてって何?」と聞いたのだが、2人とも知らないようだ。
そもそもこの寺には池や沼のような物も見当たらない。
本殿の中にはそれ以外なにもなく、「うたて沼」の意味も解らなかった俺たちは、紙を元あった場所へ戻すと、城跡へ向かうために廃寺を後にした。

元来た道を戻り、さっきの分かれ道を右の方へと進むと、すぐに山の頂上へとたどり着いた。
ここには朽ちた感じの案内板があり「○○城跡 本丸」と書かれている、どうやらここが目的地のようだった。
山頂はかなり開けた広場になっており、下のほうに市街地が見えるかなり景観のいい場所だ。
と、なんとなく下のほうを見るとさっきの廃寺も見えた。

3人でさっきの廃寺って結構広い敷地なんだなーなどと話していると、ある事に気がついた。
寺の庭を回った時に一切見かけなかったはずだが、庭の端の方に直径数mくらい、大きな黒い穴のようなものが見える。
「あんなものあったっけ?」と話していると、寺の庭に何か小さな動物が出て来ていた、そしてその動物が庭の中を走り出した瞬間、その穴のようなものが「動いて」まるで動物が穴の中に消えてしまったように見えた…

わけが解らない現象を目の当たりにした俺たちは「…今あの穴動いたよな?なんだあれ…」と唖然としていると、更にとんでもない事が起きた。
その物体が突然宙に浮くと、かなり高い距離まで上りそのまま移動し始めた。
その時になって、俺たちはあれが穴などでは無く、真っ黒で平面のなんだか良く解らない物体である事に気がついた。

139 :4:2013/11/07(木) 20:28:49.45 ID:N/XIvReQ0
その平面状の物体は結構な高さを浮いて、俺たちが来た道の上を山頂へと向かって進みだした。
その時、恐らく移動する物体にびっくりしたのだろう、木の間から大きめの鳥が飛び出し、宙を浮く平面状の物体とぶつかった。
が、鳥はそのまま落ちる事も物体を通り抜ける事も無く消えてしまった…
何がなんだか解らないが、とにかくあれは何かヤバそうなものだ、そしてそのヤバそうなものは明らかに俺たちの方へと向かってやってきている、その事だけは理解できた。

とりあえずここからすぐに退散した方が良さそうだ。
3人でそう話して気がついた、あの物体は俺たちが登ってきた道沿いにやってきている、ということは、来た道を戻れば確実に鉢合わせしてしまうという事だ。
とりあえず逃げようと言ったは良いがどうしたら良いのか解らない。すると、Bが「ここ通れそうだぞ!」と茂みの方を指差した。
そこへ行ってみると、近くまで行かないと解らないであろうくらい細い獣道のようなものが下へと続いている。ただし、この道がどこへ続いているか全く解らないうえに、俺たちが登ってきた道とは完全に反対方向だ、当たり前の事だが逃げれるには逃げれるが車からは遠ざかる事になる。

その事はAもBも解っていたのだろう、この獣道を下るかどうか躊躇していると、突然耳に違和感を感じた、感覚としては車で山を登っていて気圧差で耳がおかしくなる感じが一番近いだろう。AもBも同じ違和感を感じたらしく戸惑っている、その時俺はふと下のほうを見た。すると、例の物体はもうすぐそこ、恐らく二の丸であろう平地の
部分までやってきていた。

140 :最後:2013/11/07(木) 20:29:23.76 ID:N/XIvReQ0
もう迷っていられるような余裕も無い。
俺は2人にもうあれが凄くそこまで来ている事を伝えると、おもいきって獣道のある茂みを下る事にした。
2人もそれに続き、殆ど茂みを掻き分けるように道を下っていくと、後ろの方からAが「ヤバイ、もうすぐそこまで来てる!急げ!」と言ってきた。
俺が後ろを振り返ると、例の黒い物体がもうあと10mくらいのところまで近付いてきている。
俺たち3人は最早草や木の枝をかき分けることすらやめ、がむしゃらに獣道を駆け下りた。

どれくらい走っただろうか、暫らくすると木の間から舗装された道路が見えてきた、俺たちは泥だらけになりながらも必死で殆ど転がるように道を下り、なんとか舗装された所までたどり付くことが出来た。
その時、突然金属質の耳鳴りのような音が聞こえ、次いで後ろから「バチンッ!」と何かが弾けるような音が聞こえてきた。びっくりして後ろを振り向くと、そこには例の黒い物体はなく、爆竹か何かを破裂させたような、そんな感じの煙が漂っているだけで、俺たちは呆然としてしまった。

その後、民家も無いような山道を散々迷い、殆ど真っ暗になる頃にやっと最初に車を停めたところまで戻る事が出来た。
結局その後もあれが何だったのかはわからない、そもそもあんな体験をしてまた同じ場所へ戻る勇気などなかったし、そんな事をしても俺たちに何の得も無かったからだ。

▼親父が若かった頃、新築のアパートを借りたらしい

873 : 1/2 [sage] 2009/09/05(土) 15:55:09 ID:cjmGqcm70
親父が若かった頃、就職が決まり新築のアパートを借りたらしい。
バイトしていた材木店のトラックを借り、今まで住んでいたボロアパートから後輩に頼んで引越しをした。
特に大きい物は無かったので荷解きはそんなに時間はかからなかった。
後輩は部屋についた頃から顔が真っ青であきらかに体調が悪そうだったのでバイト代数千円を握らせその日は帰したそうな。
その夜、引越しの疲れで早々と床についたのだが、深夜にボソボソ・・・と何か語りかけてくるような声を聞き目が覚めた。
親父が一番早く引越しをして他の部屋にはまだ誰も住んでおらず、隣人の声では無かった。
電気を付け、外を見渡しても静かな深夜の住宅街。酔っ払いも歩いてはいなかった。
気のせいにして再び床につくと寝入り始めた頃にまたボソボソ・・・・と声がする。
家鳴りとか風の音が、人の話している音に聞こえるに違いない。
そう思おうとしたがやはり「建物の中」で誰かが話しているようだた。
もしや間抜けな泥棒が隣の空室に忍び込んだのか?と壁に耳をあて聞き耳をたてる。
何も聞こえない。人の気配はない。明日も早いし気のせいだ、寝よう、と思った矢先反対の耳からボソボソ・・・と声が聞こえた。
振り返るも当然誰もいない。

イライラしてきた親父は原因を突き止めようと両隣の部屋、上階、全ての部屋をノックして回ったそうだ。
結果、やはり親父以外はまだ越してきていない。
引越しの疲れだと思い部屋に戻るととんでもない光景が目に入った。
キッチンの排水から白い手が伸びている。
今まさにそこから這い出ようとせんばかりに。
思わず叫びそうになり逃げ出しそうになったがグッと堪える。
目を凝らして見ていると、何かを探しているような手付きでパタパタとキッチンを這い回り、暫らくするとスーっと排水口に飲まれていった。
体中汗が噴出したが、ここで逃げたら俺の負け(確かに親父はそう言った)と思い、キッチンの蛇口を開き水を思い切り流したそうだ。
当然、細い配水管に人なんか入っている訳もなく、何の異常もなく流れる排水。
シンク下の収納も開けてみたがもちろん誰もいない。

874 : 2/2 [sage] 2009/09/05(土) 15:56:17 ID:cjmGqcm70
これは幽霊。見間違えでは無いし、特有の嫌な感じもした。
子供の頃から嫌なモノは見たし、怖い思いも何度もした。
逃げるのもいいが、それでいいのか?敷金礼金は返って来るのか?これは立ち向かわなければならない現実じゃないか?
そう考えた親父。わが父ながら頼もしい。
おもむろに排水口に顔を寄せ
「二度と出てくるな!テメー俺が死んだら追っかけまわすぞ!!」
深夜にも関わらず思い切り怒鳴ったらしい。排水口に向かって。
気が済んだ親父はバカらしくなって布団に入ったそうだ。
命までは取られない、幽霊ごときに殺される訳がない。
その後、何事も無く朝を迎え、材木店にトラックを返しに行くと後輩が昨日と同じく真っ青な顔して、何か言いたげにしていた。

理由を聞くと、こうだ。
部屋に入った瞬間、物凄く嫌な感じがして、その方向を見るとキッチンから白い手が生えていたとの事。
時々変なのを見るけど、あんなに気持ち悪いのは初めてだった。
折角の新居でそんなモンを見たと言ったら気を悪くするだろうから言えませんでした。

それから親父の脅しが効いたのか何事も無かったそうだけど、2年くらいで転勤となり部屋を出ることになった。
最後の日、部屋から出ようとすると背後に妙な気配が。
あー。また出たか・・・憑いてくるなよ、と思いつつ怖いもの見たさで振り向くと例の白い手が、排水口の所から手を振っていたそうです。
シュールな光景ですが、親父も手を振り返したそうな・・・。
さすがに最後のこれは作りだと思いましたが、親父ならやりかねないので余談までに書き留めておきます。

▼天井裏のざわめき声

10 :1/5 2013/11/02(土) 20:51:05.00 ID:W3ujJ8R60

高校を卒業し、進学して一人暮らしを始めたばかりの頃の話。
ある夜部屋で1人ゲームをしていると、下の方から
大勢の人がザワザワと騒ぐような声が聞こえてきた。
俺は「下の階の人のところに客が一杯来ているのかな?」とも思ったが、
耳を澄まして良く聞いてみると、
声の感じから数人という事はなさそうだ、もっと大勢の人の声のように聞こえる。

気のせいかもしれないが、まるで大きな駅とかなどの雑踏のざわつきのような感じだ。
その時は「そういう映画かテレビ番組でも見ているのかな?」と考えながら、
それ以上気にせずにいた。 が、寝る頃になっても一向に「ざわつき声」がなくなることは無く、
そこまで大きな音では無いのだが 深夜3時頃まで聞こえていたせいで、
結局気になってその日は殆ど寝る事ができなかった。

それから数日間、毎日ではないが夜10時頃から深夜3時頃まで、
頻繁に「ざわつき声」が聞こえてくるので俺はろくに眠る事ができず、
いい加減苦情を言おうと階下の人のところへ行く事にした。

呼び鈴を押して暫らくすると住人が出てきた、歳は俺より2つか3つ上くらいだろうか、
見た感じ学生っぽく見える。俺が上の階の住人である事を話し苦情を言おうとすると、
その人はいきなり不機嫌になり
「あんた毎日毎日真夜中に何やってんだ、煩くて仕方が無いんだが」と逆に言われてしまった。

(ややこしくなるので、ここからは下の階の人を仮にサトウさんとしておきます)

意味が解らない俺は、事情を最初から話して下のほうから
殆ど毎日のように大勢の人のざわつき声のようなものが聞こえてくると話すと、
サトウさんは「ざわつき声」が夜になると“上から”聞こえてきて、
そろそろ大家か不動産屋に苦情を言おうと思っていたと話し出した。
その話を聞いて、俺は理由は良く解らないが何かいやな感じがしてきた。

あれは明らかに人の声だ、何度も聞いているから聞き間違いは無い、
それにサトウさんも「大勢の人のざわめき」である事は間違いないという。
暫らくの沈黙の後「…天井裏に何かあるのかな?」とサトウさんが言ってきた。

11:2/5:2013/11/02(土) 20:51:47.09 ID:W3ujJ8R60
>>10の続き

「天井裏行ってみる?」サトウさんがそう切り出してきて、
俺の返事も待たずに懐中電灯を持ち出してきた。
が、俺は勝手に解決しようとして万が一にも天井踏み抜いたり、
そうでなくとも何か壊してしまったら後々色々問題になるかもしれない、
ここは管理している不動産屋に事情を話して来てもらったほうが良いんじゃないかと
提案し、行く気満々のサトウさんを説得した。

そして俺は「ざわつき声がする」と言うと不信に思われるので、
その辺りははぐらかし「床下から何か異音がする」と不動産屋に白々しく電話を入れた。
すると不動産屋はどうやら天井裏にネズミか何かが入り込んだと思ったのだろうか、
数日以内に業者を連れてそちらに向かうと言ってきた。

俺はなにか結果的に騙しているような感じになってしまってちょっと引け目を感じたが、
その事をサトウさんに話すと「まあ、異音がするのは事実だしとにかく来てもらおうよ」
という事で、特に問題ないだろうとの事だった。

当日、結構早い時間にサトウさんが俺の部屋にやってきた、
不動産屋と約束した時間にはまだかなり余裕がある。
彼が言うには、どうも急な用事が入ってしまって今日は立ち会えないとの事で、
不動産屋が来たら問題ないから合鍵で勝手に部屋に入ってしまって
かまわないと伝えてほしいとの事だった。

「そんな事自分で電話しろよ…」俺はそう思ったが、
まあ仕方が無いので了解し、不動産屋との待ち合わせの時間まで待機する事にした。

昼少し前くらいに不動産屋が駆除業者と一緒にやってきた。
不動産屋がサトウさんと連絡が取れないが何か聞いていないかと言うので、
今日の早朝にあったことを話すと、少し困った顔をしたが一応サトウさんの部屋へ行く事にした。

話を聞くと、1階と2階の間を調べるにはサトウさんの
部屋のバスルームの天井から入るしか無いらしい。
サトウさんの部屋に行くと、合鍵で開けてほしいとの事だったが、なぜか部屋のカギは開いていた。

流石に俺が入るのは問題があると思うので、
業者と不動産屋に任せて外で待っていると、突然中から
「うわ!大丈夫ですか!?」という声が聞こえてきた、
何事かと玄関のドアを開けてみると、不動産屋と業者が
真っ青な顔をして出てきて「警察に電話を…」と言ってきた。

12:3/5:2013/11/02(土) 20:52:37.30 ID:W3ujJ8R60
>>11の続き

その間色々あったのだが長くなるので結論から書くと、
サトウさんがバスルームで死んでいたらしい。
それから色々大変だった。
パトカーや救急車がやってきて大騒ぎになり、俺も警察から色々と事情を聞かれた。

朝にサトウさんと話したときは、不信な様子は少なくとも
俺の見た感じでは一切なかった事をはなし、一応天井裏の事を警察に話すと
それも含めて調べていたようだが、何か見付かったのかとかそういう事はなにも
教えてもらえなかった、結局俺としては天井裏の「ざわめき声」も含め、
サトウさんの死因も何もかもあやふやなままになってしまった。

その日の夜。
色々ありすぎたので疲れてしまい、さっさと寝てしまおうと早めに布団に入ると、
「例のざわめき声」がいきなり聞こえてきた。
が、何かがいつもと様子が違う、良く解らないが違和感を感じる…
暫らくして違和感が何なのかに気がついた、
今までは下から聞こえてきていた声が、明らかに横から聞こえる。

しかも今までは床越しに聞いていたので多少くぐもって聞こえていたのだが、
今回はまるで「同じ部屋の中」から聞こえてくるように鮮明だ、
そう考えたとたんに急に背筋が寒くなってきた。
目を開けて声のほうを見てみたい気持ちもあるがぶっちゃけ怖い。
そうは言ってもやはり声の正体は気になる、俺は意を決してベッドから起き上がり、声のする方向を見た。
そしてとんでもないものをみた。

そこにはスーツ姿の男が1人立っていた。
ただ、厳密には「立っていた」というのとは少し状態が違う。
まるで水面から上半身だけを出しているかのように、
床から人の上半身が生えているような状態だ、それだけでもかなり異様な状況なのだが、
そのスーツ姿の男は眼球を上下左右に激しく動かし、
口もまるで早口言葉を喋っているかのように激しく動いている。

そして、その口から例の大勢の人のざわめき声が聞こえてきていた。
俺はあまりの事に体が動かせず、訳も解らずそのスーツ姿の男を凝視していると、
暗がりに目が慣れてきてもう一つ異様なものをみつけた。

13:4/5:2013/11/02(土) 20:53:20.90 ID:W3ujJ8R60
>>12の続き

サトウさんだ。
サトウさんが床から顔だけを出し、めいっぱい目を見開いて天井を見つめ、
まるで魚のようにゆっくりと口をパクパクさせている。
それをみた時、なぜか直感的に「あれは何かとてつもなくヤバイものだ」と感じた。
俺は完全に思考が停止してしまい、わけも解らないまま着の身着のままで
携帯と財布だけを持って部屋から逃げ出した。
その夜はひとまずマンガ喫茶で夜を明かすと、朝一番で不動産屋へと向かった。
あんな場所にはもう住んでいられないので、引越し手続きをするためだ。

不動産屋につくと、担当の人を出してもらいすぐに引越しの話を切り出したのだが、
突然の事にしてもやけに担当の人の様子がおかしい、
なぜかどうしても引越しをさせたくないように見える。

不信に思ってしつこく追求してみると、
どうも俺はサトウさんの死に関係があるのではと疑われて
いるらしい、だから安易な引越しはさせれないようだった。
言われてみれば当たり前の事だ。

サトウさんと最後に会っていたのは俺だし何より「騒音トラブル」もあった、
朝の出来事も俺がそう言っているだけで客観的な証明など何一つない、
何よりサトウさんの死因はまだ不明のままだ、俺が殺したと疑われても仕方が無い状況だ。
そこに来ていきなり俺が引越しをしたいと言って来れば、
不動産屋としても当然疑うだろうし、当然不動産屋だけではなく警察も疑っているだろう。

かと言って、あの部屋に戻るのだけは絶対にいやだ、
あんな得体の知れない不気味な物が現れた場所でまた過ごすなどありえない。
そもそもあのスーツ姿の男がサトウさんの死に何らかの形で関わっているのは明白だ、
もしかしたら次のターゲットは自分かもしれない。

そんな事情が事情だけに、俺としても絶対あの場所に戻るのはいやだ、
そこで信じてもらえるかどうかは解らないが、
今までの経緯や昨晩の事を正直に不動産屋に話した。
すると、不動産屋はこの話を信じたのかどうなのか解らなかったが、
とりあえず自分の裁量ではどうにも判断できないので、警察と相談してほしいと言って来た。

14:5/5:2013/11/02(土) 20:53:55.33 ID:W3ujJ8R60
>>13の続き

仕方が無く、俺は昨日警察から貰った名刺の番号に電話をして、警察署で事情を話すことにした。
警察署につき、担当の人に不動産屋で話したことと同じ事を話したのだが、
当たり前といえば当たり前だが当然話は信じてもらえなかった。
むしろ「こいつは何を言っているんだ」みたいな態度を取られ、
連日の寝不足の事もありイライラしていた俺は、
発作的に「だったらてめーもあそこで一晩いてみろよ!」と、
大声で怒鳴って担当の警察官に自分の部屋のカギを投げつけた。

後から考えれば、理不尽で無茶な要求をしていたのは俺のほうなのだが、
警官は俺を落ち着かせると、引越し先はあまり遠くにしない事と、
引越し先の住所を報告し警察からの電話には必ず出る事を約束すると、
引越しを許可してくれた。

その後俺はなんとか別の場所に引っ越す事が出来、
事件の方はどうやらサトウさんの自殺のようだという事も解り、俺への疑いもなんとか晴れた。
自殺である事が判明してから暫らくして、俺はまた警察に呼ばれた。
どうもサトウさんのPCから日記が見つかっていたのだが、
そこに書かれている内容の一部に俺が警察で話した例のスーツ姿の男と酷似した
人物のことが書かれていたそうで、その辺りの事情をもう一度詳しく聞きたいということだった。

結局あのスーツ姿の男の正体は今でも不明のままだが、
警察から聞いた話でいくつかわかったこともある。
日記の内容から、どうも俺が最初にサトウさんの所へ苦情に行った時点より前に
彼は「スーツ姿の男」に出会っており、「ざわつき声」の正体がその男である事も知っていたようだった。

そして、日記にはスーツ姿の男が明らかに
悪意のある相手である事が繰り返し書かれていて、サトウさんは身の危険を感じていたらしい。
なぜそこまでわかっていたにも関わらず、
彼はあんなさも何も知らないかのような態度を取ったのだろうか、
警察は何も言っていなかったが、もしかしたら天井裏には何かがあったのではないだろうか。

サトウさんはそこまで知っていて、
何らかの理由で俺を巻き込もうとしていたのではないだろうか、今となっては何も解らない。

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