873 : 1/2 [sage] 2009/09/05(土) 15:55:09 ID:cjmGqcm70
親父が若かった頃、就職が決まり新築のアパートを借りたらしい。
バイトしていた材木店のトラックを借り、今まで住んでいたボロアパートから後輩に頼んで引越しをした。
特に大きい物は無かったので荷解きはそんなに時間はかからなかった。
後輩は部屋についた頃から顔が真っ青であきらかに体調が悪そうだったのでバイト代数千円を握らせその日は帰したそうな。
その夜、引越しの疲れで早々と床についたのだが、深夜にボソボソ・・・と何か語りかけてくるような声を聞き目が覚めた。
親父が一番早く引越しをして他の部屋にはまだ誰も住んでおらず、隣人の声では無かった。
電気を付け、外を見渡しても静かな深夜の住宅街。酔っ払いも歩いてはいなかった。
気のせいにして再び床につくと寝入り始めた頃にまたボソボソ・・・・と声がする。
家鳴りとか風の音が、人の話している音に聞こえるに違いない。
そう思おうとしたがやはり「建物の中」で誰かが話しているようだた。
もしや間抜けな泥棒が隣の空室に忍び込んだのか?と壁に耳をあて聞き耳をたてる。
何も聞こえない。人の気配はない。明日も早いし気のせいだ、寝よう、と思った矢先反対の耳からボソボソ・・・と声が聞こえた。
振り返るも当然誰もいない。
イライラしてきた親父は原因を突き止めようと両隣の部屋、上階、全ての部屋をノックして回ったそうだ。
結果、やはり親父以外はまだ越してきていない。
引越しの疲れだと思い部屋に戻るととんでもない光景が目に入った。
キッチンの排水から白い手が伸びている。
今まさにそこから這い出ようとせんばかりに。
思わず叫びそうになり逃げ出しそうになったがグッと堪える。
目を凝らして見ていると、何かを探しているような手付きでパタパタとキッチンを這い回り、暫らくするとスーっと排水口に飲まれていった。
体中汗が噴出したが、ここで逃げたら俺の負け(確かに親父はそう言った)と思い、キッチンの蛇口を開き水を思い切り流したそうだ。
当然、細い配水管に人なんか入っている訳もなく、何の異常もなく流れる排水。
シンク下の収納も開けてみたがもちろん誰もいない。