137 :2:2013/11/07(木) 20:26:40.90 ID:N/XIvReQ0
20分くらい細い山道を登った頃だろうか、途中で道が二手に分かれていた。
看板でもあれば良いのだが、あいにくそういう気の効いたものはなさそうで、仕方なくカンで左の方へと進んでみる事にした。すると、先の方を一人で進んでいたAが上の方から俺たちに「おい、なんかすげーぞ、早く来てみろ!」と言ってきた。
俺とBはなんだなんだと早足にAのところまで行ってみると、途中から石の階段が現れ、更にその先には城跡ではなく恐らく長い事放置されていたであろう廃寺があった。

山門や塀、鐘などは撤去されたのだろうか、そういうものは何も無く、本殿は形をとどめているが鐘楼やいくつかの建物は完全に崩壊し崩れ落ちている、本殿へと続く石畳の間からは雑草が生え、砂利が敷き詰められていただろう場所は一部ほとんど茂みのような状態になっていた。
ただ不思議なのは、山門などは明らかに人の手で撤去された様な跡があったにも関わらず、残りの部分は撤去もされず朽ちていてかなり中途半端な状態だった事だ。

時間を確認すると、まだまだ日没までは余裕がありそうだ、俺たちはなんとなくその廃寺を探索することにした。
が、周囲を歩き回っても特に目に付くようなものはなく、ここから更に続くような道も見当たらず、Aと「多分さっきの分かれ道を右に行くのが正解なんだろうなー」と話していると、本殿の中を覗き込んでいたBが「うおっ!」と声を挙げた。

Bの方をみると本殿の扉が開いている。
話を聞いてみると、だめもとで開けてみたらすんなり開いてしまったという。
中は板敷きで何も無くガランとしている、見た感じけっこうきれいな状態で中に入っていけそうだ。
中に入ってみると、床はかなりホコリだらけで恐らくだいぶ長い事人が入っていないのが解る、なんとなくあちこちを見回していると、床に何か落ちているのが見えた。
近付いてみると、それはほこりにまみれ黄ばんでしわくちゃになった和紙のようで、そこにはかなり達筆な筆書きで「うたて沼」と書かれていた。