【ビートたけし】北野武映画語録【北野武】

北野武(1947年1月18日生まれ)、職業・芸人

ZZ92 さん

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映画監督は黒澤明だね。やっぱり凄いよ。特にフレームへのこだわり方とかね。 黒澤さんはフレームの中のもの全てに気を配ってるんだ。主役以外のものが変な動きをすると怒るわけ。一つの絵として見てるんだよね。

出典 おまえの不幸には、訳がある!―たけしの上級賢者学講座

基本的にストーリーは、4コマ漫画なんですよ。「起・承・転・結」があって。最初に思いつくのは、一番最後のコマ、ラストのシーンだけで、そこから逆に、「起・承・転」までをつくる。で、今度はそこから横に広げていく。1枚の写真みたいな感じですよね。「これこれのシーンで、この映画は完成!」っていうイメージが最初ですね。

出典 『映画の未来へ』北野武×山根貞男

オレはせっかちだからか、映画にいろいろ詰め込んじゃうんですよ。こっち側、つくり手はその詰め込んだものをよく理解している。でも、それが伝わるかどうかはまた別の問題で。たとえばハリウッドの映画だったら、本当に丁寧に説明してくれるから、わかりやすくなっているんだけど、オレ、そういうの全部カットしちゃう。だから「何、これ?」って言われちゃうんだけど。

出典 『映画の未来へ』北野武×山根貞男

テレビは見ている人がタダでしょ? だからある程度何やってもいいと思う。でも映画はお金を払って見てもらうものだから、好き勝手にやるのはちょっと悪いなって思っちゃうんですよ。

出典 『映画の未来へ』北野武×山根貞男

自分の感覚としては、テレビだったら妥協しなくていい。でも映画だと、自分が想像していた結果とあまりに違う現実があるから、妥協しているんです。妥協して、それでなおかつ当たらないとなると、自分でもイヤになっちゃう。それだったら、一度、完全に自分のやりたいようにやろう、と。それが『ソナチネ』なんですよ。でも映画の世界っていうのはみんな職人で、カメラマンもなかなか言うことを聞かない。「こういう風に撮ってくれ」って言っても、「監督、悪いけど普通はそういうことはしないんです」とか言って。

出典 『映画の未来へ』北野武×山根貞男

今作っている映画でも、役者にいうのはなるべく演技しないでくれってこと。悲しい場面でも、悲しいんだろうなって客が推測するくらいで丁度いい。なにしろ客がいろいろ好きな色に塗りたいって思っているんだから、映像は塗り絵になっていれば十分なんだよ。

出典 こんな時代に誰がした!

バーチャルリアリティってのが若いもんの間で流行っているらしいが、あれって人間が完璧なものだったらゲラゲラ笑っちゃうようなシロモノでしょ。ところが、「いやあ、おもしろかった、怖かった」ってみんな喜んでいる。人間の感覚なんてものはそのぐらいいい加減なんだよね。客のほうが自分に都合いいように勝手に想像してくれる。そういう手前勝手のノリがないと映画なんてものは成り立たないんだよ。音楽で刺激され、映像で刺激されて客が泣いてくれる。全部ウソだよ。オレみたいなヘソ曲がりは、この役者、ひどく臭い芝居なんかやりやがってと思うから醒めちゃうけど、客のほうは金を払って、この野郎、わざとらしく泣きやがってなんてことは思わないでしょ、(略)映画の作り手としては、そういう客の期待を壊さずに楽しめるネタを与えてあげればいいんであって、それ以上のものを与えてやるのはよくないんだよ。

出典 こんな時代に誰がした!

銃の発砲シーンを撮っている時に、血ノリのことでイライラしたことがあったんだよ。男が撃たれて壁に血ノリがついて、何カットも撮っているうちに血が乾いちゃう。で、小道具さんが何回も塗り直そうとしてくれる。中断しちゃう。こっちとしては役者のこの顔で早くいきたいのに、「スミマセン、ちょっと血ノリが」ってことになる。 仕事熱心なのはわかるけど、もし絵になった時に血ノリが乾いているかどうか気がつくようだったらそのシーンは撮らないほうがいい。

出典 こんな時代に誰がした!

近頃流行の素人監督が同じカットを4回も撮るっていうのは実に間抜けなことであって、どの絵が欲しいかってことが頭にないんだよ。 要するにインチキ画家みたいなもんで、紙に卵ぶつけてさ、その壊れ方が新しい美だとかほざいているだけだよ。ハプニングの結果狙いみたいなことをやっているといくらフィルム回しても終わらないぜ、無駄ばっかし作っちゃう。

出典 こんな時代に誰がした!

どうせならクサヤや納豆のような監督になればいい。クサヤや納豆は関西ではまるで人気ないけれど、好きなやつにはたまらない大好物、それに徹すればいい。

出典 こんな時代に誰がした!

怒鳴り散らしていい人と悪い人があって、ひどい絵を撮っているくせに監督だからってんで怒鳴ってしまうと、一発で笑い者になっちゃう。何を偉そうなことをいってんだ、で一巻の終わり。

出典 こんな時代に誰がした!

オレの映画ってのは絵としては淡白でさ、重厚な絵ってのが撮れないんだ。大島渚監督なんか、例えば「戦場のメリークリスマス」を見直すと、いかにも重厚な絵があるよ。オレにはとても撮れない絵で、ダルいんじゃないかって感じがするんだけど、その重苦しさがやっぱりちゃんとしているんだ。大島監督は頭のいいエリートでオレにはないものがあって、やっぱり大したもんだと思うね。

出典 こんな時代に誰がした!

復帰した芸人、じゃなくてガンマンって設定はあくまで映画のそれであってさ、日本の映画でも元ヤクザが生活に困って悪いやつの口車に乗せられ、ヤクザに戻って荒稼ぎに乗り出すってパターンがよくあるじゃない。つまり、アカデミー賞受賞作もB級ヤクザ映画も同じ定型に従ってはいるんだけど、『許されざる者』の場合、実になんともこれがいい味を出しているんだよ、こっちの胸にズシッと重くかぶさってくる凄さがあるんだもん、リアルな味っていうか、見事な映画になっているんだよ。 イーストウッドの演出力とテクニックってのは大したもんだ、非常にうまく仕上がっていると思うね。

出典 こんな時代に誰がした!

『ソナチネ』の主人公ってのがけっこうおもしろいキャラクターなんだ。 理屈をいうとき、「楽しく豊かな生活」ってのを唯一の目標にして頑張ってきて、差し当たってその目標が実現した時の空虚感ってのがあるわけで、そもそもどうして我々はここにいて生きなければいけないんだろうって疑いがせり出してきちゃった。(略)結局のところ、夢を見せられ生かされてきたんであって、自分が生きてきたという実感がないじゃないか。生かされはしているくせに、死ぬことは毛嫌いしてきてさ、よーく考えると生きることと死ぬことの差がどれだけあるんだろう。生きることがどれだけ嬉しいんだか、死ぬことがどれだけ罪悪なんだかわからない、この地球の上にいてよりいい生活を目指し、結婚して子供を作り働いて死んでいかなくてはいけない理由、根本的にいってなぜそうするのかがわからない、そういう気分って確実にある。『ソナチネ』の主人公ってのがその気分をかなり純粋に体現しているわけで、生きようが死のうがどうでもよくなっている。

出典 こんな時代に誰がした!

この間、「日本アカデミー賞」のテレビ中継見てて大笑いしたもんな。日本で映画を撮ればみんなノミネートされるって感じだぜ。ノミネートされない映画のほうが少ないんじゃねえの。 女優さんもほとんど全員集合でさ、話になんないよ。新人俳優で映画に出れば「新人賞決まり」ってなもんで、そういう手をつないだやり方じゃ駄目だろう。

出典 こんな時代に誰がした!

よく考えてみれば、映画ってのは人間の目のいい加減なメカニズムで成り立っているわけだよ、残像なんだから。 残像ごときに人間のリアルな感情を盛り込もうなんて、初めっからウソなんだよ。役者の位置関係にしてもウソだし、時間の設定もウソだし、みんなウソ。

出典 こんな時代に誰がした!

おもしろい映画ってどこかわがままな監督が作っているんだよ。 そうすると、わがままをきいてくれるスタッフ作りってのがポイントなんだ、難しいんだけど。

出典 こんな時代に誰がした!

野球の監督も土木現場の監督もいるけど、映画の監督の場合、運の要素ってのがほとんどない。"筋書きのないドラマ"であるらしい野球の監督は最高の采配した時でも負けることはあるし、その反対の場合もあるし、要するに運や偶然に頼る割合がけっこう高いんだけど、"本物のドラマ"の映画監督は、実力がありのままに結果に出ちゃう。それがおもしろい。

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