バーチャルリアリティってのが若いもんの間で流行っているらしいが、あれって人間が完璧なものだったらゲラゲラ笑っちゃうようなシロモノでしょ。ところが、「いやあ、おもしろかった、怖かった」ってみんな喜んでいる。人間の感覚なんてものはそのぐらいいい加減なんだよね。客のほうが自分に都合いいように勝手に想像してくれる。そういう手前勝手のノリがないと映画なんてものは成り立たないんだよ。音楽で刺激され、映像で刺激されて客が泣いてくれる。全部ウソだよ。オレみたいなヘソ曲がりは、この役者、ひどく臭い芝居なんかやりやがってと思うから醒めちゃうけど、客のほうは金を払って、この野郎、わざとらしく泣きやがってなんてことは思わないでしょ、(略)映画の作り手としては、そういう客の期待を壊さずに楽しめるネタを与えてあげればいいんであって、それ以上のものを与えてやるのはよくないんだよ。

出典 こんな時代に誰がした!