自分の感覚としては、テレビだったら妥協しなくていい。でも映画だと、自分が想像していた結果とあまりに違う現実があるから、妥協しているんです。妥協して、それでなおかつ当たらないとなると、自分でもイヤになっちゃう。それだったら、一度、完全に自分のやりたいようにやろう、と。それが『ソナチネ』なんですよ。でも映画の世界っていうのはみんな職人で、カメラマンもなかなか言うことを聞かない。「こういう風に撮ってくれ」って言っても、「監督、悪いけど普通はそういうことはしないんです」とか言って。

出典 『映画の未来へ』北野武×山根貞男