『ソナチネ』の主人公ってのがけっこうおもしろいキャラクターなんだ。 理屈をいうとき、「楽しく豊かな生活」ってのを唯一の目標にして頑張ってきて、差し当たってその目標が実現した時の空虚感ってのがあるわけで、そもそもどうして我々はここにいて生きなければいけないんだろうって疑いがせり出してきちゃった。(略)結局のところ、夢を見せられ生かされてきたんであって、自分が生きてきたという実感がないじゃないか。生かされはしているくせに、死ぬことは毛嫌いしてきてさ、よーく考えると生きることと死ぬことの差がどれだけあるんだろう。生きることがどれだけ嬉しいんだか、死ぬことがどれだけ罪悪なんだかわからない、この地球の上にいてよりいい生活を目指し、結婚して子供を作り働いて死んでいかなくてはいけない理由、根本的にいってなぜそうするのかがわからない、そういう気分って確実にある。『ソナチネ』の主人公ってのがその気分をかなり純粋に体現しているわけで、生きようが死のうがどうでもよくなっている。