青森県黒石市は、市中に70軒もの焼きそば店がある「焼きそばの町」として知られている。太い平麺で、モッチモチした食感が特徴。濃厚なウスターソースと絡んで昔から馴染みのある味だそう。しかし、その焼きそばが生んだ全く新しいジャンルの焼きそばがいま、脚光を浴びている。それが「つゆ焼きそば」だ。

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○ソースとラーメンスープがマッチ

焼きそばにつゆ? どーゆーこと? とメニュー名だけ聞いてもちんぷんかんぷん。一体どんな料理なんだろうと現地に向かってみた。最初に向かったつゆ焼きそばの店は「妙光食堂」だ。店の外壁にドドンと「元祖つゆ焼きそば」と明記してある。早速メニューにある「元祖つゆ焼きそば」(650円)をオーダー。

第一声はというと「おおっ!? こりゃ何だ?」というもの。出てきたのはまごうことなきラーメン。しかし、麺は平打ち太麺の(ウスターソースの絡んだ)焼きそば。恐る恐る箸をつけて麺をリフトアップ。うわ、正真正銘の焼きそばだこれは。

意を決してズルズルっと食してみる。ん? 何だこれ! ソース味とラーメンスープが絶妙なマッチ。濃厚なソースの味をスープが中和し、今までにない味わいだ。かなりのボリュームだけれどつるっといただける。

「つゆ焼きそばは、私が間違えてラーメンのスープの中に焼きそばを入れちゃったことが始まりなの。それを食べてみたらおいしかったんだよね」と、店主の中村弘美さんがメニュー開発のきっかけを語ってくれたが、それは約25年前のこと。以来、店の看板メニューになっているという。

「地元の人は昔から食べてくれているよ」。そして最後にひと言。「うちはつゆ焼きそばの元祖。でもつゆそばとは違うからね」。中村さんによると昭和30年代にあった「美満寿(みます)」という店が、つゆそばの元祖だという。ここでアタマが混乱。「つゆそば」と「つゆ焼きそば」とは一体何が違うの!?

●information
妙光食堂
青森県黒石市元町66

○そばのつゆを入れたのが「つゆそば」

その謎を探るべく訪れたのは「味の店 明日香」だ。聞くところによるとここの店主のお母さんが昔、「美満寿」で働いていたのだという。明日香はその味を受け継いでいる店のようだ。

ここで食べられるのはその名も「黒石つゆ焼きそば」(700円)。麺はやはり太麺の平打ち。しかし、麺をすすってみると「ん!?」と驚く。これは和風ダシじゃないか。そばのダシだ! ラーメンの中華スープと違う!

「美満寿で出していたつゆそばは、そばのつゆだったんですよ。だからつゆそばって昔は言ってたんです」と店主の青木和子さん。なるほど、「つゆそば」と「つゆ焼きそば」は本来違うものだったんだ。「でも今は、つゆ焼きそばって名前で統一されてます」。

どうして美満寿でこんなびっくりメニューが考えられたのか。実際のところは誰にも分からないという。「寒い青森の冬にあったまるためにつゆを入れたとか。つゆを入れることで焼きそばをかさ増しし、おなかを満たしたとか。いろいろ言われているんですけどね」と、青木さん。

そんな話を聞きながら食べるつゆ焼きそばは、たまらなくノスタルジックな味わい。ただ、「昔そのままの味を再現したこともあるけど、やっぱり昔の舌と今の舌は違いますから」と、少なからず現代風のアレンジも試みているという。

●information
味の店 明日香
青森県黒石市横町24-1

○400円というリーズナブルな一品も

最後にもう1軒……と足を運んだのは、観光客にも手軽に食べやすいと評判の「こみせ庵」。観光スポット「こみせ駅」の中にあり、1食400円でつゆ焼きそばを食べられる。「誰にも食べやすい味です」と店長の中田純禎さんが言うように、さっぱりあっさりいただける。プラス100円で温泉卵がトッピングできるが、これもなかなかにうまい!

●information
こみせ庵
青森県黒石市中町5

以上、ざっと駆け足で紹介した「つゆ焼きそば」。是非とも青森への旅の際には、現地の食堂で味わってみてほしい。個性的だが日本人好み、懐かしい味わいの一品なのである。

※記事内の情報は2014年2月取材時のものhttp://netallica.yahoo.co.jp/news/20140331-00000038-cobs