欧州中央銀行(ECB)のメルシュ専務理事は、中小企業への融資促進に向け、ローン債権証券化のリスクは銀行資本規制上、適切に反映する必要があるとの見解を示した。

同専務理事は、証券化商品の資本上の扱いが世界的に見直されており、その結果、銀行資本の上でリスクウエートが厳しくなれば欧州の中小企業の証券化市場を抑制するだけでなく、現状にも打撃を与えると指摘。

その上で「質の高い証券化商品の扱いの不一致に対し、欧州連合(EU)は速やかに対応することが重要だ。英中銀(イングランド銀)とECBが国際通貨基金(IMF)の春季会合で、この問題での共同声明を出せば、欧州の断固たる姿勢を示すことになる」と述べた。

メルシュ理事はさらに、資産担保証券(ABS)の適正を特定する上で、中銀の適用基準が有益な出発点になり得るとした上で、「当該基準は共通のリスク許容基準を基に定められており、市場参加者の間で広く受け入れられているほか、利害対立もない」と語った。

英中銀も証券化市場の建て直しに意欲を示している。

企業が資金を調達する際、大企業は社債を発行することも可能だが、中小企業はもっぱら銀行から融資を受ける。ただ資本基準の厳格化に伴い、各行とも融資拡大には消極的ななかで、債券の証券化やリパッケージ化が欧州の政策当局者の間で注目されている。

欧州委員会は今月に入り公表した長期的資金調達の促進に関する報告書の中で、証券化債券の売買を行う銀行や保険会社を対象に資本要件の緩和を検討する案を示している。