精子の数は毎年1.9%減少? 男性不妊の現実を専門医に聞きました

最近よく耳にする機会が増えている「不妊」の話。女性のみなさんは、何かと気になっているとは思いますが、実は原因の半分は男性にあるそうです。しかも「男性の精液所見は悪化している」という声もちらほら。そこで、本当のところどうなっているのか知るべく、不妊症など生殖医療に詳しい産婦人科医の船曳美也子先生に聞きました。

―先生、男性の精子が減っているというのは本当ですか?

「1950年ごろから『精子の数が減っている』という報告が各国からされています。2013年のフランスの最新報告では、15万人について1989年から17年間のデータを解析したところ、精子数が毎年1.9%減少していたと言います。

環境ホルモンをはじめとした環境変化や肥満、喫煙などが原因として言われています。中にはジーンズを履くようになって精巣の温度が上がっているから、などという説もあります。ただ、本当に精子が減っているのかというと、統計の手法に問題があったりして、よくわかりません。いずれにせよ、不妊の原因の約半分は男性が原因です」

―意外と男性不妊って多いものですね。男性は加齢によるダメージを、女性ほど受けないイメージがあったのですが、どんな原因があるのですか?

「男性不妊のメカニズムは3つで、精巣で精子を造る『造精機能』、精子が精管を通る『輸送機能』、精子が排出される『射精機能』の障害です。

例えば、抗ガン剤での治療や、成人のおたふくかぜなどは造精機能障害の原因になります。でも、特に原因がなくても精子ができない方もいます。場合によってはゼロのこともあります」

―無精子、それでは子どもは難しそうですね……。

「それが、最近では治療法があるのです。無精子症の場合、以前はまったく治療法がなかったのですが、最近は精巣から顕微鏡下の手術で精子を取り出して、体外受精をさせる治療法があります。ですので、決してあきらめる必要はありません」

―精子を造れても、精子を運ぶ管に問題があれば、卵子と精子は巡り合えませんね。

「そうですね。精子が造られていても、その精管が詰まっていると精液の中に精子が出てこられなくなります。また、逆行性射精といって、外ではなく膀胱のほうへ射精してしまい、尿の中へ精子が入ってしまうような事例もあります。

とはいえ、男性不妊でもっとも多いのは、射精障害かもしれません。EDの場合もありますし、医学的には未完成婚と言いますが、結婚しているけれどセックスをしたことがないカップルも、不妊外来ではよく見かけます。草食系男子が増えているということですが、もしかしたら、未完成婚のカップルも増えているのかもしれません。

また医学的には不妊とはいいませんが、仕事が忙しすぎたり、単身赴任などで物理的にセックスの機会がないカップルもいます。そういう場合は、精子を凍結しておいて、女性の周期にあわせて治療したりすることもあります」

なかなか子どもができずに悩んだら、専門医に診てもらうといいですね。

(聞き手:小池直穂)

船曳美也子
150名の女性医師がボランティア活動を行うEn女医会所属。1983年 神戸大学文学部心理学科卒業、1991年 兵庫医科大学卒業。産婦人科専門医、認定産業医。肥満医学会会員。医療法人オーク会勤務。不妊治療を中心に現場で多くの女性の悩みに耳を傾け、肥満による不妊と出産のリスク回避のために考案したオーク式ダイエットは一般的なダイエット法としても人気を高める。自らも2度目の結婚で43歳で妊娠、出産という経験を持つ。2013年10月9日、「婚活」「妊活」など女性の人生の描き方を提案する著書「女性の人生ゲームで勝つ方法」(主婦の友社)を上梓。
現在は、オーク梅田レディースクリニックを中心に診療にあたっている。
医療法人オーク会HP http://www.oakclinic-group.com/