しかし、大きさは紛れもなく野兎のそれであったそうです。

しかもよく見ると、その兎は酷く怯えており、
彼が近付いても動こうともしません。

よく見ると、後ろ脚が罠にかかっているようでした。

罠と言っても彼の見た所、細い草に引っかかっている様にしか見えません。

彼は別に何の気もなく、罠を外してやったそうです。

そしてふざけて「恩返しをしろよ」と兎を見ると、
先に語った姿の醜悪さなものですから、
突然腹の底からぞっとし、逃げ帰ったそうです。