――著書の中で、「お金は信用を数値化したもの」と定義していました。この考え方も変わっていない?
【堀江】お金は、信用の表示形態というか、信用が顕在化したものだと思います。だからお金より信用のほうがずっと大事です。好きなことをやっていれば、自然に信用につながるじゃないですか。それで悪く思われるのだとしたら、中途半端だからでしょう。口先だけで、行動が伴ってないとかね。

――ライブドア事件で、社会的な信用をなくした部分もあると思います。ビジネスに影響は出ていますか。
【堀江】出てくる部分もあるし、出てこない部分もありますよ。僕が投資をしようと思っていた会社から、「本当は投資してほしいが、投資を受けると上場できなくなるから」と言われて、結果的にできなかったケースもあった。そういうところでは実際に影響も出ています。

――そうすると信用があればいいとは単純に言いにくい気がしますが。
【堀江】そんなことないですよ。あれでなくなっちゃうような信用は、本当の信用じゃないですから。パブリックな薄っぺらい信用はどうでもいいんです。僕にはがっちりグリップしている一定の層があって、僕はその人たちを大事にしてきたし、その人たちも応援してくれている。もともと僕は、わかってくれる人だけわかってくれればいいというスタンスでやってきました。検察がきたから今後はケアしていかなきゃいけないけど、わかってくれている人はずっとわかってくれている。それが僕のいう「信用」です。

僕は会社(旧ライブドア)に資産を引き渡したのでキャッシュはほとんど残っていなくて、ストックはものすごく少なくなった。ただ、ストックといっても、実体の資産としてのストックと、無形固定資産的なストックがある。後者のストックが信用であって、それがいま僕のフローの源泉になっている。フローの現れ方として現金という形もあるし、そうではない形もある。信用が大事というのは、そういう意味ですよ。

――フローの現れ方としては、ほかにどういうものがありますか。
【堀江】たとえば僕が事業を立ち上げると言ったら、いろんな人が「一緒にやりましょう」と言って手弁当で集まってくれたりする。堀江と一緒なら何かおもしろいことができるだろうという期待感も、ある意味、無形固定資産的なストックです。とくにライブドアで働いていた人たちはそういう思い入れが強いみたいで、いろんな話がきます。僕はせっかくだから新しい人たちとやりたいけれど、それはそれでうれしいです。