ゾロアスター教の成立する以前のペルシアは、同一民族を祖にし歴史的な対立も含めて関係性の深いインドの宗教(ヴェーダ教や、後のヒンドゥー教)とよく似た多神教を信奉していました。ペルシアの宗教とインドの宗教は、まるで鏡のように逆転した関係にあります。ペルシアの善神アフラは、インドでは悪鬼アシュラと考えられていましたし、ペルシアの悪魔の総称であるダエーワは、インドの神々デーヴァのことを指しています。ゾロアスター教は、多神教から一神教への大変革を遂げた当時の新興宗教だったわけです。
多神教から一神教へ変化しようとする動きは、ペルシアに限らず世界の各地で起こっています。例えばインドでもヴェーダ教からヒンドゥー教へと変わっていく中、ヴィシュヌやシヴァといった強い神格に信仰対象を集約していきました。ヴィシュヌが、クリシュナやラーマ、ナラシンハ、そして仏陀といったそれぞれ人気のあった存在を吸収しヴィシュヌの化身だったとしたことは唯一神化のあらわれといってもいいでしょう。