栃木県佐野市と言えば、佐野ラーメンで有名だ。ご当地ラーメンとしては定番中としての定番で、市内に200件以上の店がひしめき合っている。最近では、ゆるキャラの「さのまる」まで登場。ラーメンの丼をかぶったかわい過ぎる見た目に、「ゆるキャラなのに全然ゆるくねぇぞ」と思ったのは筆者だけではないはず。

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○竹で麺を練り込む「青竹打ち」

今回向かったのは、佐野ラーメンの中で老舗の部類に入る「麺'Sショップおぐら屋」だ。昭和51年(1976)に創業で、何と観光バスで人が押し寄せるほどの人気店。店主の塩島庸雄(つねお)さんに聞くと、佐野ラーメンのルーツは大正時代に洋食店に雇われた中国人コックが持ち込んだ技法にあるという。

佐野ラーメンといえば、最大の特徴は麺の「青竹打ち」。太い孟宗竹(もうそうちく)をひざに挟み、竹でグイグイと小麦粉に圧をかけて練り込むのだ。「おぐら屋」も青竹打ちをしているが、塩島さんによると、今も青竹打ちをしているところもあれば、専用の業者で機械打ちをする店も少なくないという。

それは手抜きではなく、ある意味まっとうな理由からきている。「青竹打ちで苦労するのは、変わらない味を出すことなんですよ」。日によって味のバラツキが出てくる。それを防ぐのが大変だというのだ。(麺作りのプロの)製麺業者に任す店があるのは手抜きではなく、味の安定化につながるからだというわけだ。

○食感はうどんに近く具材はシンプル

まずは四の五の言わずに食べてみよう。ラーメンは577円。スープはびっくりするほど透明だ。あっさりしているけど、鶏ガラ主体に和風ダシも入っているので決して薄くはない。

そして青竹打ちの麺はいかに。ツルツルっとすすると、んんんこの食感は……微妙にうどんのようなのだ。細口のうどんなのか? 塩島さんいわく、「青竹打ちすると麺に気泡がいっぱい入るんですよ。それに多加水麺だから、うどんに近い食感になるんでしょうね」。麺は平打ちのちぢれ麺だからスープによく絡む。

この味なら、ラーメンに刺激より安心感を求める人にオススメだ。ちなみに具材はネギにチャーシュー、メンマ、ナルトとシンプル。ナルトの入っているラーメンって、意外と今や少ない部類ではないだろうか。さすが老舗の味、ごちそうさまでした!

●infomation
麺'Sショップおぐら屋
佐野市出流原町993-1

○老若男女が毎日食べたい味

次に向かったのは、「麺'Sショップおぐら屋」をリスペクトしつつも独自の味を追求しているという「らーめん大金」だ。

話を聞いたのは、自らも佐野ラーメンを子供の頃から食べており、「これぞソウルフード」という店主の大金(おおがね)純一さん。大金さんはいきなり、「とんこつラーメンとか味は濃くておいしいけど、毎日は食べられないじゃない」と言う。

確かにそれはその通り。大金さんは話を続ける。「佐野ラーメン全体が小さいお子さんからお年寄りまで、毎日食べても飽きないラーメンという立ち位置なんだよね。加えて、毎日同じ味を出すことが大変なんですよ」。これだ! 「毎日食べられる立ち位置のラーメン」だからこそ、味を安定させたいわけであり、それが一番の苦労だと言うのである。

大金のラーメンは550円。味はスッキリと明快だ。澄んだスープの深みは文句なし。ちぢれ麺のモチモチ具合もなかなかだ。この店で特筆すべきはそのチャーシュー。豚バラの巻きチャーシューのうまみがじんわりと口に広がる。シンプルなラーメンだからこそ、具材の表情が際立つのだろう。