日本人のソウルフードといっても過言ではないラーメン。しかし、どれだけラーメンが進化しようが、ベースとなるダシは豚骨や鶏ガラと相場が決まっていた。そうした中で鳥取県では、ラーメンのダシを豚骨ならぬ牛骨で取るというのだ!

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それにしても一体どんな味なのか? 牛汁やテールスープ+麺のようなイメージをしつつ、「鳥取牛骨ラーメン」を食べに鳥取県へ出かけてみることにした。ちなみに現在、この鳥取牛骨ラーメンが食べられる店は20軒以上にのぼる。鳥取県観光案内のwebサイトには、22軒のおすすめ店が掲載されているので、訪れる前にチェックするのもいいだろう。

○野菜でもダシをとったマイルドスープ

最初に足を運んだのは、鳥取牛骨ラーメンの名店として名高い「香味徳 倉吉」だ。赤碕駅前に店を構えている老舗の牛骨ラーメン店「香味徳」が代替わりし、今は子供たちが味を継いでいるという。香味徳は3店舗あり、店主の紙徳益男さんは三男坊にあたる。

「他の地方のことは知らないけれど、この辺りじゃあ牛骨でダシを取るのは当たり前だったんですよ。ユニークだと思ったこともないですね」と益男さん。この店のラーメンは1杯500円。出てきたそれは、見た目はいかにも昔なじみの中華そば。

中太のちぢれ麺に半分透き通ったスープは保守的なルックスだが、いざスープを飲んでみると「ん、確かに普通のラーメンと違う」。そう思わせる深いコクがある。トッピングはチャーシューにモヤシ、ネギ、メンマ。そしてスライスされたゆで卵とこちらも保守的だが、バランスが取れている。

「みな独立しているから、兄弟の店でも味が違うと思いますよ」と益男さん。ちなみに、倉吉店が目指すのは「おふくろの味」だという。だからこそこの見た目なのだろう。牛骨のほかに、キャベツやタマネギなどの野菜でダシをとっているので、野菜の甘みがスープをマイルドに仕上げている。

この包み込むような柔らかさこそ、「おふくろの味」の真骨頂だ。興味深いのは最初からスープにコショウが入っているため、少しスパイシーなこと。「みんな、コショウとか香辛料好きだからね。あとは自分で足して味を調えてください」。そう笑顔で話してくれた。

●information
香味徳 倉吉
鳥取県倉吉市瀬崎町2719

○キレがある地元の醤油がポイント

次に訪れたのは、昭和33年(1958)創業の「すみれ」だ。今の主人は3代目の山根悟資(さとし)さん。ラーメンは一杯550円である。

「牛骨は鳥取県産の牛骨の大腿骨を中心に使っています。みんなそうじゃないかな。骨髄とゼラチンがスープに溶け込んで、煮込みの火力でこってりにもあっさりにもなるんです。うちはあっさりですかね」と山根さん。

ちなみに味付けには地元産の醤油を使っているそうで、「甘さはありませんがキレがありますよ」とのこと。確かに、キリリとした味わいだ!

実はこの牛骨ラーメン、ずっと熱くて全然冷めないため、いつまでも熱々をフーフーしながら食べ進めることになる。よく見てみると、スープの表面から湯気が立っていないのだ。「脂が熱を逃がさないんですよ。それも牛骨ラーメンの特徴です。もっとも今は油を抜いて出す店もありますけどね」。最後の麺1本まで熱々が楽しめるのも、牛骨ラーメンの魅力なのかもしれない。

●information
すみれ
鳥取県東伯郡琴浦町浦安189

○日本料理の技術を生かした一品

最後に訪れたのは、ちまたで「上品な味わい」と評判の「味もり多」だ。こちらも創業40年の伝統の味。「うちは牛骨ベースに鶏ガラも加えています。だから味がまろやかなんでしょうかね」と店主の森田洋子さん。

こちらの店は一昨年亡くなったご主人が創業した店だそうで、日本料理の名店「なだ万」で修行した腕をラーメンに生かしたという。そのラーメンは一杯550円。「主人が四苦八苦して独学で作り上げた味なんです」。その思い出の味を守っているんですねと伺ったところ、「そんな甘っちょろいことじゃなくてもう必死ですよ!」。そう笑う森田さんである。

●information
味もり多
東伯郡北栄町江北740-13

牛骨と聞くと、スタンダードな全国のラーメン好きには少しエキセントリックに感じるかもしれない。しかし、現地で食してみると、実に舌になじむおいしさだった。鳥取県内には現在、数多くの「牛骨ラーメン」があるという。ただのもの珍しさではなく、味を求めて鳥取に出かけていただきたい。

※記事中の情報は2014年2月取材時のものhttp://netallica.yahoo.co.jp/news/20140329-00000018-cobs