世界の主要株価指数の中で、日本株の下落率が突出して拡大している。米財政問題への懸念が深まり、リスク回避の動きで株価はほとんどの国で軟調だが、日経平均<.N225>は前週1週間で約5%下落。「震源地」である米国のダウ<.DJI>さえも大きく上回る下げとなっている。

消費増税による景気腰折れ懸念も指摘されているが、東京五輪決定でイベントドリブン型のヘッジファンドが積み上げたロングポジションの巻き戻しが主因との見方が有力だ。

<消費増税はニュートラルな材料>

米議会の対立が鮮明化した前週、世界の株価指数は総じて軟調だった。9月27日─10月4日に、FTSEユーロファースト300種指数<.FTEU3>は0.8%、英FT100種総合株価指数<.FTSE>は0.9%、独クセトラDAX指数<.GDAXI>は0.4%、仏CAC40種平均指数<.FCHI>は0.5%、韓国総合株価指数<.KS11>は0.7%、香港ハンセン指数<.HSI>は0.2%と軒並み下落している。

その中で目立って下落したのが日本株だ。ほとんどの指数の下落率が1%以下なのに対し、日経平均<.N225>は4.98%、TOPIX<.TOPX>も4.41%だった。米財政問題の中心である米国のダウ<.DJI>でさえ1.21%の下落、S&P500<.spx>はほぼ変わらずであり、その軟調ぶりが目立っている。週明けの7日の市場でも日経平均は下げ幅を広げており1%を超える下落となった。

他市場の下落率が小さいのは、現時点では、予算案について、米両党がほとんど歩み寄りが見られないとはいえ、急転直下、合意に至る可能性もあるためだ。「ロングを外す動きは続いているが、新規のショートポジションは組みにくい。米国が債務不履行(デフォルト)に至る可能性は小さく、相場急反転のリスクを想定しなければならないためだ」(準大手証券)という。

ショートを組みにくいのは日本株も同じ。予想株価収益率(PER)などバリュエーション的に割高感は乏しいほか、業績予想の上方修正期待が大きい3月期決算企業の中間期算発表を控えている。消費増税による景気腰折れが懸念されているものの、「消費増税は日本が財政再建に前進した」との好評価もある。

「むしろ消費増税を見送れば、日本への失望売りが出た可能性もある。景気圧迫要因には違いないが、果たして景気を腰折れさせるかどうかはまだわからない。消費増税自体は今のところ、ニュートラルな材料だ」と東海東京調査センター・シニアストラテジストの柴田秀樹氏は指摘する。

<海外短期筋のポジション巻き戻し>

そうした中で、日本株の下落率が大きいのは、海外短期筋のロングポジションが溜まっていた反動が出ているとの見方が有力だ。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は「東京五輪決定で、イベントドリブン型のヘッジファンドが日本株のロングポジションを積み上げた可能性がある。その巻き戻しの分だけ下落率が高いのだろう」と指摘する。

2020年夏季五輪が東京に決定したのは9月7日。日経平均は週明けの9月9日から26日まで6.7%上昇していた。