今週の米国株式市場は、予算問題の決着に向けた努力が続けられる中、一段の混乱に見舞われる可能性がある。
さらなる深刻な結果をもたらしかねない債務上限引き上げ問題について、投資家の懸念は続きそうだ。
協議の行き詰まりから引き起こされた政府機関の一部閉鎖は1週間近くに及んでおり、多くの投資家が想定していたよりも既に長期にわたっている。
米国株式市場は4日に反発したものの、週間ベースでS&P総合500種が下落したほか、投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー(VIX)指数<.VIX>は16.89と、9月20日の13.12から上昇した。VIX指数は依然として比較的低水準にとどまっているが、オプション市場では市場のボラティリティー拡大に備える動きが出始めた。
投資家の間では、予算をめぐる与野党の攻防が債務上限引き上げ問題と一体になれば事態はより深刻になるとの懸念が強まっている。債務上限が引き上げられなければ、米国はデフォルト(債務不履行)に陥ることになる。
プルデンシャル・フィナンシャル(ニュージャージー州)の市場ストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は「それ(デフォルト)はありそうにないが、間違いなく可能性の1つではある。市場に織り込まれていないイベントであるため、大きな懸念だ」と指摘。「それは単なる国内イベントにとどまらず、国際的なイベントになる」と述べた。
連邦準備理事会(FRB)が緩和策縮小の見送りを決めた9月18日に米株は過去最高値を付けたが、財政協議をめぐる民主・共和両党の対立が重しとなり、S&P総合500種はその日以来、2%下落している。
政府機関の一部閉鎖が始まって以降、S&P総合500種を構成するセクターの中で、公益セクターの下げが最もきつくなっているが、ビスポーク・インベストメント・グループによると、不動産や消費者・プロフェッショナル向けサービス、資本財関連セクターもさえない状況となっている。
デフォルトの際に上昇が見込まれる金利との関連が密接な不動産株は0.8%安。公益株は0.7%安となっている。住宅建設のDRホートン<DHI.N>は9月30日終値から4.6%下げている。
防衛関連のロッキード・マーチン<LMT.N>は4%安。政府との契約に依存している防衛関連銘柄は値が振れやすくなっている。
S&P総合500種が9月18日以降下落している要因の1つには、FRBが2013年と14年の経済見通しを引き下げたことに伴い、多くの投資家の予想よりも景気は弱いのではないかとの懸念がある。
政府機関の一部閉鎖問題がさえない景気回復を損なうのではないかとの懸念があり、アナリストの中には、米国が景気後退に陥るとの見方も出ている。
カルバート・インベストメント・マネジメントの株式部門最高投資責任者(CIO)、ナタリー・トルナウ氏は「政府機関の閉鎖やそれを取り巻く全ての不透明感により、経済成長にさらなる負の影響が出るとわれわれは強く確信している」と指摘。特に個人消費が影響を受けるとみている。
同氏は、米国株式市場が短期的に一段安に見舞われると予想。S&P総合500種が年初来で18.5%上げていることに触れ、「利益確定売りを出し、今後の展開を見極めようとするムードが生まれやすくなっている」と説明した。
雇用統計といった重要指標も発表が見送られており、FRBの政策の行方を占う手掛かりも薄くなっている。
ただ今週は、連邦公開市場委員会(FOMC)議事録や、トムソン・ロイター/ミシガン大学がまとめる消費者信頼感指数といった、政府から独立した機関による経済関連発表・指標は予定通り公表される見通し。JPモルガン・チェース<JPM.N>やウェルズ・ファーゴ<WFC.N>といった主要企業の第3・四半期決算発表も予定されている。
チャールズ・シュワブ(テキサス州)のアクティブトレーディング・デリバティブ部門マネジングディレクター、ランディ・フレデリック氏によると、VIX指数は一段と上昇する見通しだ。
同氏は「最高で20台後半、30近くになるだろう」と指摘。ただ、歴史的に見れば低水準で、2011年夏の前回債務上限問題発生時に同指数は48まで上昇したことがある。
テクニカル的には、S&P総合500種の50日移動平均に注目が集まっている。4日時点の同移動平均は約1679。同氏は「(その水準を割り込めば)1630が次の節目となる」と指摘した。