証券取引等監視委員会は3日、アブラハム・プライベートバンク(東京都港区)が海外ファンドの商品を実質的に無登録で販売し金融商品取引法に違反したなどとして、行政処分を科すよう金融庁に勧告したと発表した。
関係筋によると、金融庁は、これを受けて業務の一部停止命令を軸に処分内容を検討する。
監視委によると、同社取締役が国外に設立した会社を通じ、アブラハムの顧客によるファンドの購入額に応じた報酬を海外ファンドから受領し、持株会社のアブラハム・グループ・ホールディングスがその都度、同じ額の債権を計上していた。
アブラハム・プライベートバンクの社員が持株会社からの出向のため、3社は実質的に一体となって無登録でファンド販売を手がけていたと監視委は認定した。遅くとも2010年8月から13年5月までに、2792人の顧客が海外ファンドを取得した。
アブラハムは「当社の主な収益は個人投資家に対するサービスの対価であり、海外ファンドから一切金銭を受領していない」とコメントしている。
同社はウェブサイトでも「金融機関や運用会社から販売手数料はもらっていない」と記載。同社より低い手数料のサービスの存在を知りながら同社の手数料を「最安値」と表示するなどしており、監視委は「著しく事実に相違したり、誤認させるような表示の広告」だとして、この点についても金商法違反を認定した。
一方、同社は投資実績に不満を持った顧客からの依頼で2年分の報酬約900万円を免除しており、これも顧客に追加して利益を提供することを禁じる金商法違反に当たると判断した。
同社は顧客の資金は預かっておらず「顧客資金が消失するおそれはない」(監視委幹部)という。同社の主力商品についても、発行体の経営状況やコンプライアンス体制、運用パフォーマンスなどで「特段の問題を認識していない」(監視委幹部)という。
同社は2007年に投資助言・代理業を登録。「月5万円で自分年金1億円を目指せる」などと広告し、顧客が海外ファンドを直接購入できるよう支援するサービス「いつかはゆかし」を提供している。13年6月末時点の投資助言契約額の合計は746億円としている。