みずほフィナンシャルグループ<8411.T>傘下のみずほ銀行が、暴力団組員に融資を実行、担当役員がそれを知りながら放置していた問題は、国際的にマネーロンダリング(資金洗浄)対策が強化される中で、邦銀の意識や取り組みが遅れている実態を浮き彫りにした。欧米各国は犯罪集団やテロ組織への資金還流に対し、一段と厳しい法的、倫理的な規制を展開している。「ささいなことだとタカをくくっていると、世界の金融取引から締め出される事態にもなりかねない」(資金洗浄対策の専門家)との指摘もあり、反社会的勢力に対する邦銀のリスク管理体制は早急な改善を迫られている。
<FATFからの厳しい視線>
8月下旬、東京・霞が関の中央省庁を欧米のある視察団が訪問した。マネーロンダリングやテロ資金対策の国際協力を進めるために設けられた政府間会合、FATF(金融活動作業部会)のメンバーだ。彼らの海外視察は非公表が原則。今回もマスコミの目に触れることなく、警察庁や財務省、金融庁などの担当部局から日本政府や金融機関の現在の取り組みを詳しくヒアリングして帰途に就いた。
調査の目的は、2003年に出した同部会の勧告が日本においてどこまで実行されているかの検証だった、と政府関係者は言う。
FATFは、国際的な資金洗浄対策の実効性を高めるため、これまで4度の勧告を出し、各国が取り組むべき課題を提示している。しかし、日本は2003年の第3次勧告の水準に達していないとの評価で、フォローアップの対象に位置付けられている。話し合いの具体的な内容は明らかにされていないが、「つつがなく意見交換できた」と同政府関係者は話す。
日本の資金洗浄対策は「世界的には先進国とは言えない水準」(金融関係者)と言われる。FATFは2012年に、これまでで最も厳しい第4次勧告を採択している。「世界ではもう後期の試験が始まっているのに、日本はまだ前期試験の追試を受けている状態」(金融機関幹部)と酷評する声もある。
FATFの勧告を満たそうと、日本政府は今年4月、銀行口座を開設する時の本人確認を従来よりも厳しくした改正犯罪収益移転防止法を施行。しかし、顧客管理の方法などで「いまだFATFの求める水準に達していない」というのが関係者の見方だ。