過去6年間、世界の穀物市場は相次ぐ不作の危機に揺れ、在庫不足と価格高騰に見舞われていたが、米中西部では過去最高のトウモロコシの豊作を前に収穫の準備に追われており、市場構造の大転換が間近に迫っている。大転換が実現すれば、もはや穀物不足をめぐる懸念が常に存在して、価格を押し上げることはない。その代わり、穀物トレーダーたちは先を争って生産者に群がるのではなく、市場シェアをめぐって競争することになるだろう。
しかし、専門家はまだその時期には至っていないと警告する。過去数年間の食料価格上昇という不愉快な記憶が過去のものとなるには、少なくともあと1回はトラブルなしの世界的な生産拡大のサイクルが必要だという。世界の穀物在庫は回復に向かっているが、在庫水準は大混乱の発生を防ぐことができる80日程度には届いていない。
最も懸念されるのは、トウモロコシや小麦などの価格が半値に落ち込む中で利益を生む作物の需要が加速的に増える事態だ。他方、肥料、種子、燃料などの生産コストは上昇し続けており、フル生産の体制を維持しようという農家のやる気を削ぐ恐れもある。
南米や黒海地域など世界の他の主要な輸出地域は、国際穀物市場を混乱に陥れ、輸入国の不安増大を招いた深刻な干ばつ被害から回復した。ことし秋の米国の豊作はこれらの地域に続く動きで、米国自身も1930年代の「ダスト・ボウル」と呼ばれる砂塵被害以来最大の干ばつから1年が経過した。
現在の収穫分を含まない米国の9月1日時点のトウモロコシ在庫は16年ぶりの低水準に減少した。ただ、予想ほどの落ち込みでなかったとの投資家の見方から、シカゴのトウモロコシ先物価格<Cc1>は3年ぶりの安値を付けた。大豆在庫も予想は4年ぶりの低水準となったものの、予想を上回っている。
穀物トレーダーにとって、1日の米農務省統計は既に旧聞に属する。彼らが注目するのは収穫見通しで、トウモロコシ、大豆、小麦でことし過去最大が見込まれ、来年の期末在庫は大幅に増加するとみられている。