<デフレ脱却、損なう懸念>

しかし、消費増税と経済対策だけで、今春までのような「爆発的な」海外勢の買いが再開するとの期待は低い。

日経平均採用銘柄の予想株価収益率(PER)は15倍後半、PBRも1.3倍にまで上昇している。野田佳彦前首相が衆院解散を宣言し、いわゆる「アベノミクス相場」が始まった昨年11月14日時点ではPERは13.58倍、PBRは0.91倍と解散価値の1倍を割り込んでいた。日本株の割安感は後退している。

また、消費増税は景気にとって下押し要因だ。5%から8%への消費増税は、8兆円の負担増になる。単純計算で、月間20万円を消費する家庭なら月6000円、年間なら7万2000円の負担増だ。月40万円の消費なら年間14万4000円にのぼる。「3%」という数字以上に実際の負担感は大きい。

消費増税は、デフレ脱却に重要な消費者マインドを直撃する。一方、5兆円規模の経済対策は、投資減税など企業向けの対策が中心だ。雇用や所得のベースである企業の競争力を強化することは、長い目で見れば消費にポジティブに働くが、短期間で大きく出る消費増税のインパクトを打ち消すことができない可能性がある。

「消費税率引き上げの負のインパクトと、企業向け経済対策による長期的インパクトとの間には、大きなミスマッチがあるように思えてならない」とシティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏は指摘する。

法人税の実効税率引き下げを期待する海外投資家は多いが、2─3%の引き下げでは、立地競争力の強化という点では効果が薄い。
実効税率の国際比較では、米国が40.75%と高く、日本が2番目の35.64%(本則)、フランスが33.33%、ドイツが29.55%と続く。中国は25.00%、韓国は24.20%、シンガポールは17.0%。ライバルであるアジア各国に対抗するためには、10%といった大幅な引き下げが必要だが、財源の問題が浮上する。