締めくくり
画像の箇所は、『伊都内親王願文』の締めくくり(願文の本文末尾)にあたる極めて重要な場面です。
すべての衆生が迷いの世界を抜け出して悟りを開くこと、そして亡き父母をはじめとする先祖代々が未来永劫救われることを願う祈りの言葉で結ばれています。
以下に**釈文(文字の書き起こし)**、**書き下し文**、および詳細な現代語訳(意味)を整理いたしました。
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### 釈文(文字の書き起こし)
**【右ページ】**
1. **誓汎倶出愛河慧**(※前ページの「慈舟暫」から続く「誓汎…」)
2. **柯一飛便趣苦海空**
3. **肯二縁真治益照**
4. **六反圓満三明洞**
**【左ページ】**
5. **朝前亡久遠同趣菩**
6. **提七世母縁普臨解**
7. **脱**
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### 書き下し文
> **【右ページ】**
> 誓(ちか)ひて汎(うか)び倶(とも)に愛河(あいか)を出(い)で、慧柯(けいか)一たび飛(と)んで便(すなわ)ち苦海(くかい)空(むな)しきに趣(おもむ)く。肯(あえ)て二縁(にしえん)の真治(しんち)を益々(ますます)照(てら)し、六反(ろくたん)円満(えんまん)にして三明(さんみょう)洞(あきら)かなり。
> **【左ページ】**
> 朝(あした)に前亡(ぜんぼう)久遠(くおん)同(とも)に菩提(ぼだい)に趣(おもむ)き、七世(しちせい)の母縁(ぼえん)普(あまね)く解脱(げだつ)に臨(のぞ)まん。
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### 詳細な現代語訳(意味)
* **【右ページ:迷いの世からの脱出と悟りの光】**
誓いを立てて(慈悲の船に)乗り、皆ともに愛着と迷いの河(愛河)を抜け出します。智慧の梢(慧柯)が一たび羽ばたけば、たちまちにして苦しみの海(苦海)は空(から)となり消え去ります。
真実の悟りの光は(父母と私という)二つの縁をいよいよ明るく照らし出し、六波羅蜜(修行の道)は円満に成就して、仏の優れた智慧(三明)はどこまでも澄み渡り明瞭となります。
* **【左ページ:亡き父母・先祖の解脱の祈り(結び)】**
願わくは、亡き両親をはじめとする遠い先祖代々の御霊(みたま)が、ともに等しく菩提(悟りの境地)へと至りますように。
そして過去七世にわたる母なる縁によってつながる人々までもが、ことごとく迷いを離れ、真の解脱(永遠の安らぎ)を得られますように。
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### 💡 この箇所の注目ポイント
* **最後の決め字「解脱」:**
左ページ2行目の最下部に「解」、そして3行目の頭にぽつんと一字大きく書かれた「**脱**」の文字があります。願文の最後の結びとなるこの「解脱」の二字は、行草書の軽やかな連綿と独特の余白を生み出しており、非常に力強く印象的な終わり方となっています。
* **橘逸勢の筆致の冴え:**
「愛河」「苦海」「菩提」「解脱」といった仏教の核心をなす言葉が並ぶこの最終場面では、筆の強弱と緩急(スピード感)が最も高まっており、書道史上でも名高い屈指のハイライトです。