3. オペレーション・ホワイトコート(1954年~1973年)
事件概要:
フォート・デトリックで実施された「オペレーション・ホワイトコート」は、志願者(主にセブンスデー・アドベンチスト教会の良心的兵役拒否者)を対象に、Q熱、野兎病、炭疽菌などの病原体への曝露実験を行いました。目的は、ワクチンや治療法の効果を検証することでした。
約2,300人が参加し、実験は厳格な管理下で行われたとされますが、志願者はリスクの全貌を完全に理解していなかった可能性があります。
症例と影響:
公式には重篤な健康被害は報告されていませんが、Q熱や野兎病に感染した被験者には一時的な発熱や倦怠感が見られました。長期的な健康影響については、十分な追跡調査が不足していました。
一部の参加者は、後に実験の倫理性を疑問視し、インフォームド・コンセントの不備を訴えました。
議論と反響:
このプログラムは、生物兵器の防御研究における人体実験の倫理的境界を示す事例として議論されています。志願者が宗教的信念や社会圧力から参加した可能性が指摘され、現代の倫理基準では問題視されるケースです。
オペレーション・ホワイトコートは、米国の生物兵器研究が攻撃的から防御的へと移行する過渡期の象徴とも言えます。
4. 2001年炭疽菌郵便事件(アメラス事件)
事件概要:
2001年9月11日のテロ直後、米国で複数の郵便物に炭疽菌の胞子が含まれた事件が発生。ワシントンD.C.やニューヨークのメディア企業、議会議員事務所が標的となり、5人が死亡、17人が感染しました。
使用された炭疽菌は「Ames株」と呼ばれる高純度の菌株で、フォート・デトリックの研究施設と関連があると判明。FBIの調査は、米国内の科学者ブルース・アイビンス(フォート・デトリック勤務)を主犯と結論づけましたが、彼は2008年に自殺し、裁判に至らず真相は議論のままです。
症例と影響:
死亡した5人は、吸入性炭疽症を発症。感染者は皮膚炭疽や吸入炭疽を呈し、抗生物質治療で一部が回復しました。
事件は全米にパニックを引き起こし、郵便物の検査強化やバイオテロ対策の予算増額につながりました。
議論と反響:
炭疽菌が米国の研究施設由来である可能性が、過去の生物兵器プログラムへの注目を再燃させました。フォート・デトリックのセキュリティや、生物兵器研究の残滓がテロに悪用されるリスクが問題視されました。
一部では、事件が内部●●ではなく外国の関与や陰謀だとする主張もありますが、FBIの公式見解はアイビンス単独●●です。