5. ダグウェイ実験場での事故(1968年)
事件概要:
ユタ州のダグウェイ実験場(Dugway Proving Ground)では、生物・化学兵器の野外試験が行われていました。1968年3月、VX神経ガスの散布実験中に誤ってガスが周辺地域に漏洩。約6,000頭の羊が死亡し、生物・化学兵器の危険性が浮き彫りになりました。
直接的な生物兵器の事故ではないものの、同時期に生物兵器の野外試験も行われており、類似のリスクが懸念されました。
症例と影響:
人間の死傷者は報告されませんでしたが、羊の大量死は地域経済に打撃を与え、住民の健康不安を増大させました。事故は、野外実験の管理不備を示す事例となりました。
議論と反響:
この事故は、生物・化学兵器の実験が周辺環境や住民に与えるリスクを露呈。ニクソン大統領の生物兵器放棄決定(1969年)に間接的に影響を与えたとされます。
6. その他の注目すべき事例
スバール島での炭疽菌汚染(1940年代~1950年代):
米国と英国が共同で、スバール諸島(ノルウェー)の無人島で炭疽菌の野外試験を行いました。島に放たれた動物が感染し、土壌が長期間汚染。1980年代に除染作業が行われるまで、環境汚染が続きました。
昆虫媒介実験:
1950年代、米国は蚊やダニを生物兵器の運搬手段として研究。ジョージア州やフロリダで、感染症を媒介する昆虫の散布試験が行われましたが、実際の症例報告は確認されていません。