中国は2050年までに科学技術における世界のリーダーになることを目指している。党が民間の技術を軍事に利用することを定める「軍民融合」政策を実践しており、軍事改革のひとつと考えられている。このため、共産党体制の中国では政治目標と学術研究および軍事開発の境目が曖昧だ。

このため、中国の学術機関との連携にはリスクがあると議員らは指摘する。自民党・佐藤正久議員は、ツイッターで、「日本の軍民複合と言われる分野の基礎研究にさえ反対なのに、中国軍と縁のある研究は反対せず許容している。このことは、自民党内では保守系にかかわらず批判が多い。仮に同会議が中国と縁を切っても困るのは中国の方で日本ではない」と書いた。

近年の中国の軍事拡張とインド太平洋地域の拡張主義には、防衛省は「力を伴う現状変更」として危機感を示している。2017年の防衛白書には、中国の戦力の近代化について「具体的な将来像や必要性を明確に示さないまま軍事力の急速な近代化を進めている。わが国周辺を含む地域および国際社会の安全保障上の強い懸念」と表現している。このため、防衛省は費用助成などを通じて、日本の軍事研究を後押ししたい考えだ。

いっぽう、日本の学術機関のすべてが、安全保障技術の協力を全て否定している訳ではない。日本学術会議は2018年、国立・私立大学、研究機関の183からアンケートをとったところ、防衛装備庁が2015年度から開始した「安全保障技術研究推進制度」に申し込みしたのは、全体で30%に及ぶことが明らかになった。