河井寛次郎氏の製陶もとうとう世の末になってしまった。作陶家として異様に大きく名を成したのは大正八、九年頃のように思うが、その後、今日までには長い製陶生活が続いているわけである。(略)。しかるに彼の作陶は聊かも進歩していないのである。いや退歩を続けている。その原因は彼の天分たることに帰せねばならぬことは止むを得ないにしても、彼が何十年間、何の勉強もしなかったことである。甘い連中の護りを受けて安閑といい気になっていたことである。最近高島屋にて催された彼の作品を見て驚くことは、万策尽きて沈黙に等しき出鱈目を遣っていることである。視野を狭くして美の探求を怠りつづけた天罪を見て可なるものがある。

出典 『河井寛次郎近作展の感想』