僕が料理テストに歩いたところは、米・英・仏・独・伊であって、いずれも肉食国である。ところが、この肉食国に不思議にも日本のような良質の牛肉がないのである。ほとんど問題にならぬ悪質の牛肉が、欧米料理の素材として広く用いられている。これではうまい牛肉料理のできようはずがない。次に魚類がない。絶無ではないが、日本に比して百対一といえる程度。肉がなくて魚がない。それでいて工夫が稚拙、料理の美を知らない。行儀作法に欠けるボーイ、辛うじて料理はオリーブ油に助けられている始末である。

出典 『フランス料理について』