世間、医薬に通暁する者、病後の療養に熱心な者は、数多く見受ける所であるが、目的を健康に置き、三度三度の食事の自由を高く叫び続けている者は容易に見当らない。ただもう世間並みに付和雷同し、個性なき食物、いわば家禽の如く宛てがい扶持に大事の一生をまかせているかである。

出典 『味を知るもの鮮し』