上は大使、公使、下は貧乏画家青年、その皆が日本美食を通暁するはずのないことはいうまでもない。日本料理の真価というものがどこにあるか、ぶつかったこともなければ、気にもんだこともなさそうなひとたちばかりである。その若人によって、むやみと誇大に、フランス料理は日本人に宣伝されてしまったらしい。いわゆる若気の至りというやつである。

出典 『フランス料理について』