帰国のための荷物を手っ取り早くまとめ、
飛行機のチケットを手配し、逃げるようにして日本に帰ってくるわけだが、
帰る前に、彼女との思い出の場所やらなんやらを一通り巡った。

その国での最後の夜に、ちょうど2時過ぎ頃、
彼女が丸窓を覗いた頃、エスカレーターがブーンと鳴り始めた。

友人の忠告も無視して俺は覗いた。

しかもずっと、そのエスカレーターが止まるまで見続けた。

なにもない。なにもいない。