すると声は、ライターを無心し始めた。

「火が消えないならライターなんてもう要らないだろ。俺にくれよ」

「んー、これは大切な物だから駄目だよ」

「俺が代わりに火を見ててやるよ。だからライターくれよ」

「んー、僕のじゃないから、やっぱり駄目だよ」

こんな押し問答を何度くり返しただろうか。

やがて影がゆらりと立ち上がる気配がした。

「火が消えないんじゃしょうがないな。帰るとするか。また遊ぼう」

その言葉を最後に、何かが山の闇の中へ去って行った。