女がいました。

立木に寄りかかるように、後ろ向きで立っています。

白っぽい服を着ていて、黒い髪が肩を覆っていました。

『こんな雪山に・・・なんで女?』

俺はゾッとして、望遠鏡から目を離しました。

「おーい!」

Aが俺の方に声を掛けてきました。

すると、それが合図だったかのように、
女は斜面を下って木立の中に消えてしまいました。

「なにやってんスかー。はよして下さいよー」

Aのその声で、俺は我に返りました。