ところで、俺らの会社では山の測量するのに、
ポケットコンパスって呼ばれている器具を使っています。

方位磁石の上に小さな望遠鏡が付いていて、
それを向けた方向の方位や高低角が判るようになっています。

軽くて丈夫で扱いが簡単なので、山の測量にはもってこいなんです。

俺はコンパスを水平に据え、
ポールを持って立っているAの方に望遠鏡を向けて覗きました。

雪に覆われた地面と、
枝葉に雪をかかえた木立が見えますが、ポールもAの姿も見えません。

少し望遠鏡を動かすとロン毛の頭が見えたので、
次にポールを探して、目盛りを読むためにピントを合わせました。