姿形はもちろんAなのですが、動作の一つ一つがおかしいのです。

確かに階段を上がる動作なのですが、何かこう、
人間が人形を手で動かしているような、ぎこちない動きでした。

右手、左手、右足、左足、それぞれが独立して動いているような、
ともかく変な動きでした。

私は足がすくんで、その場で立ち止まりました。

するとAが立ち止まり、クルッと私の方へ振り返りました。

「ハハハハハハハハハ変だね、変だね、ハハハハハハハ」

と笑うAの顔を見て、私は叫び声をあげました。

動作と同じく、顔の表情もぎこちなく笑うAの顔。

何より、白目が無くなって、眼球いっぱいに広がった黒眼が、
私に叫び声をあげさせました。

私は踵を返し、全速力で階段を駆け下りました。

途中足がもつれて転びそうになりましたが、それでも無我夢中で駆けました。

気づくと、雑居ビルの一階にある薬屋さんにいました。

どうやって階段から出たか、その時の記憶はないのですが、

パニックになってた私は、後ろを振り返らずに駅まで走りました。