「昔じぃちゃんは、坊の知らない、すごく遠くのお山の中の村に住んでいたんだよ。
そこで、じぃちゃんの友達と一緒に、お山に肝試しに行ったことがあるんだ。
そうだね、じぃちゃんが今でいう、高校生ぐらいのころかな。
お地蔵さんがいっぱい並んでいたけど、友達もいるし全然怖くなかった。
でも、帰り道にじぃちゃんの友達が、お地蔵さんを端から全部倒し始めたんだ。
『全然怖くない、つまらない』って言ってね。
じぃちゃんはそこで始めて、その場所に居るのが怖くなったよ。
なんだか、お地蔵さんに睨まれた気がしてね。
友達を置いて、さっさと逃げてきちゃったんだよ。
そうしたら、その友達はどうしたと思う?」
「死んじゃったの?」
「ううん、それが、何も起こらないで普通に帰ってきたんだよ。
でもじぃちゃんは、もうそれからオバケが怖くなって、
友達と肝試しに行くのを一切やめたんだ。
その友達は、その後も何度も何度も肝試しといっては、
ありがたい神社に忍び込んだり、お墓をうろうろしたり、
お地蔵さんにイタズラしたり、色々するようになってね。
周りの人からは呆れられて、相手にされなくなっていったよ。
人の気をひくために、『天狗を見た』なんていうようになってしまった。
じぃちゃんに、『見てろ、噂を広めてやる』なんて言って笑っていたよ」