「それはな、みんなが坊の話を本当に怖いと思ったんだ。
 坊の話をきっかけにして、みんなが勝手に怖いものを創っちゃったんだよ。
 
 怖い話を作って楽しむのはいいけど、
 それが広まって、よりおそろしく加工されたり、
 より危険なお話を創られてしまうようになると、
 
 いつの日か『それ』を知った、ワシらの目には見えない存在が、
 『それ』の姿に化けて、本当に現れてしまうようになるのかもな。
 目に見えるものではなく、心のなかにね。  
 『おそれ』はヒトも獣も変わらず持つもの。
 『おそれ』は見えないものも見えるようにしてしまう。本能だからね。
 
 だから恥ずかしくないから、怖いものは強がらずにちゃんと怖がりなさい。
 そして、決して近寄らないようにしなさい。
 そうすれば、本当に酷い目にあうことはないよ」