音が遠ざかっていって、後ろを振り返ってもそいつの姿が見えなかったから、
ほっとして娘の方を向き直ったら、そいつが助手席の窓の外にいた。

近くでみたら、頭がないと思ってたのに、胸のあたりに顔がついてる。

思い出したくもない、恐ろしい顔でニタニタ笑ってる。

俺は怖いを通り越して、娘に近づかれたって怒りが沸いてきて、

「この野郎!!」って叫んだんだ。

叫んだとたんそいつは消えて、娘が跳ね起きた。

俺の怒鳴り声にびっくりして起きたのかと思って、娘にあやまろうと思ったら、

娘が「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれた
   はいれたはいれたはいれたはいれた」

ってぶつぶつ言ってる。