見かねた両親は、強引に怯える俺を車に押し込み、何処かへ向かった。

父が何度も「心配するな」「大丈夫だ」と声をかけた。

車の後部座席で、母は俺の肩を抱き頭を撫でていた。

母に頭を撫でられるなんて何年ぶりだったろう。

時間の感覚も無く車で移動しながら夜を迎えた。

二十歳も過ぎて恥ずかしい話だが、
母に寄り添われ安心したのか、久方ぶりに深い眠りに落ちた。

目が覚めるとすでに陽は登っていて、久しぶりに眠れてすっきりした。

実際には丸一日半眠っていたらしい。

多分、あんなに長く眠るなんてもうないだろうな。

外を見ると、車は見慣れない景色の中を進んでいた。

少しずつ、見覚えのある景色が目に入り始めた。

道路の中央に電車が走っている。