歩いてられなくなり、実家まで全力で走った。

息を切らせながら実家の玄関を開けると、母が電話を切るところだった。

そして俺の顔を見るなりこう言ったんだ。

「あぁ、あんた。長崎のお婆ちゃんから電話来て、心配だって。
 篠塚先生が、あんたが良くない事になってるからこっちおいでって言われたて。
 あんたなんかしたの?あらやだ。あんた首の回りどうしたの!!?」

答える前に玄関の鏡を見た。

奴が来るかもとか考えなかったな……、何故か。

首の回り付け根の部分は、縄でも巻かれているかのように見事に赤い線が出来ていた。

近づいてみると、細かな発疹がびっしり浮き上がっていた。

さすがに小刻みに身体が震えてきた。

何も考えずに、母にも一言も返事をせずに階段を駈け上がり、
母の部屋の小さな仏像の前で、南無阿弥陀仏を繰り返した。

そうする他、何も出来なかった。

心配して親父が、「どうした!!」と怒鳴りながら走って来た。

母は異常を察知して祖母に電話している。

母の声が聞こえた。泣き声だ。