釈文
風信雲書、自天翔臨。
披之閲之、如掲雲霧。兼
恵止観妙門、頂戴供養、
不知攸厝。已冷。伏惟
法體何如。空(海)推常、擬
隨命、躋攀彼嶺。限以少
願、不能東西。今思与我金蘭
及室山、集會一處、量商仏
法大事因縁、共建法幢、報
仏恩徳。望不憚煩勞、蹔
降赴此院。此所々望々。忩々
不具、釋空(海)状上。
九月十一日
東嶺金蘭 法前
謹空
現代語文
お手紙をいただきました。拝見いたしますと、ご近況が明らかとなり、雲や霧が去ったよに心が晴れ晴れといたしました。また、お手紙とともに「摩訶止観まかしかん」の経典を下さいまして、ありがたくいただき、供養をいたします。ご厚情に身のおきどころもありません。厚くお礼申し上げます。
もうだいぶ寒くなりましたがお体はいかがでございますか。わたくしは、相変わらず元気に過ごしております。
わたくしも、おことばに従って、お山に登ってお目にかかりたく思いますが、用事に追われて、参上することもできません。いま、あなたと室生むろう山ざんの堅慧けんえと3人がどこか一緒に集まり、仏法の重要な教義や因縁について語り合い、共同の力でおなじ信条にもとづく宗旨の寺を建立して、仏の宏大無辺こうだいむへんの恩徳に報いたいと思っています。どうかそのためにも面倒くさがらずに、わたくしのいるこの寺にあなたのほうからお越しください。これこそ、わたくしの希望するところです。
9月11日
東嶺とうれいの金蘭きんらん(最澄へ向けたあて名のこと)
法山(空海の弟子で、室生山の堅慧けんえ)
法前ほうぜん(脇付わきづけにあたるもの。僧侶に対してのみ使う用)
謹空きんくう(手紙の一番終わりに書いて敬意を表す用語)