膵臓のβ細胞で産生されるペプチドホルモンである。血中を流れるブドウ糖が、肝臓、脂肪細胞、骨格筋細胞に取り込まれるよう促し、炭水化物、タンパク質、脂肪の代謝を調節する。
1921年、カナダ・トロント大学の教授で糖尿病の権威であったマクラウドの元に、町医者のバンティングが訪ねて来た。
彼は「犬の膵臓から糖尿病を防ぐ物質を抽出したいので、研究生として受け入れてほしい」と申し込んできた。
石田教授
「その後のほとんどの医学辞典の“インスリンの発見”にはマクラウドの名前はなく、バンティングだけが載っています。」
【補足トリビア】
①フレデリック・E・バンティングは1891年カナダに生まれ。血糖効果作用を持つ物質「インスリン」を発見し、1923年にノーベル生理学医学賞を受賞した生理学者。
②ジョン・J・R・マクラウドは1876年スコットランド生まれ。「インスリン」の発見者の一人として、バンティングと共にノーベル生理学医学賞を受賞した生理学者。
③マクラウドが「インスリン」の発見に貢献したことは、帰省の間バンティングに実験室・助手・犬数匹を貸したこと・バンティングの提案した「アイレスチン」という名前を「インスリン」とラテン語読みにしたこと・「実験の歳に発見したのは助手だが、自分の指揮・管理のもと発見した」と自分の手柄のように学会に報告したことである。
④ノーベル賞を受賞後、マクラウドは周りからの冷ややかな目にいたたまれなくなり、トロント大学を出て行った。
インスリンは、医療体制において極めて重要とされる必須医薬品の1つとしてWHO必須医薬品モデル・リストの一覧表に掲載されている。
マクラウドは、インシュリンの精製方法の確立に関してはバンティングに協力したので、部屋を貸しただけというのは語弊があります。しかしインシュリンの精製が可能であるとの目処を立てたのは、バンディングと助手として手伝っていたチャールズ・ベストの功績です。
インスリン発見にいたるまでに重要なパートナーとして思われがちなマクラウドは、実はバンティングに自身の研究室を貸しただけなのです。
二人はノーベル生理学・医学賞を受賞することになったのです。当然バンディングはこの結果に怒りを表しましたが、最終的には二人で受賞を分ち合ったのでした。
バンティングはベストと賞金を分け合い、マクラウドもインシュリンの精製に功績のあったコリップに賞金の半分を与えた。
マクラウドは「犬と研究室を貸しただけでノーベル賞をもらった人物」と揶揄されることもあります
ノーベル賞としては異例の早さでの受賞といえます。しかし、ベストが受賞しなかったこと、マクラウドは実験には携わっていなかったことなどから、2人の仲は険悪になりました。
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