北大路魯山人の金言(料理・料理人、客人の心得など)

日本のガストロノミーや料理人、陶芸家なら読んでおきたい昭和の偉大な芸術家で美食家の著作から美食、料理と料理人、料理道具などの至言をピックアップ。「料理は自然を素材にし、人間の一番原始的な本能を充たしながら、その技術をほとんど芸術にまで高めている」など。出典 『味覚馬鹿』ほか。

kabusake さん

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<目次>
・美食の心得
・料理について
・料理人の心得
・料理講師の心得
・料理道具について
・料理(焼き物)
・客人の心得

美食は物知りになることではない。もっともよく使われる、手近な、料理の原料になる、これらのものを正当に知らなくてはならぬ。

出典 『味覚馬鹿』

ほんとうにものの味がわかるためには、あくまで食ってみなければならない。ずっとつづけて食っているうちに、必ず一度はその食品がいやになる。一種の飽きが来る。この飽きが来た時になって、初めてそのものの味がはっきり分るものだ。

出典 『味覚馬鹿』

男なら酒のよしあしをやかましくいう酒呑みのように、ものの吟味を注意深くするようになれば、料理のよしあしが語れるわけである。

出典 『味覚馬鹿』

「美味い」にも段々があって、味覚の程度も、生得的にひとりひとり違っているから、無差別に断を下すわけにはいかない。年齢差という感覚の相違もあって、美味い、不味いは、一概に言ってのけるわけにはいかない。誰が美味いと言ったか、不味いと言ったか、その言った人により判断するより仕方がない。

出典 『味を知るもの鮮し』

料理について

料理は自然を素材にし、人間の一番原始的な本能を充たしながら、その技術をほとんど芸術にまで高めている。

出典 『味覚馬鹿』

料理人の心得

いいかね、料理は悟ることだよ、拵(こしらえ)ることではないんだ。名人の料理人というものはみなそれなんだね。

出典 『味覚馬鹿』

どうしても料理を美味しくつくれない人種がある。私はその人種を知っている。その名を不精者という。

出典 『味覚馬鹿』

料理をする時は、女の人は特に頭を手拭いでカバーして料理すべし。ふけや髪の毛は味の素の代用にはならぬ。

出典 『味覚馬鹿』

料理講師の心得

料理を教えるのに、塩何グラム、砂糖何匁などと、正確に出すなら、ねぎを適宜に刻み、塩胡椒少々などというな。なになにを何グラムというような料理法を、科学的文化人の生活だと思っている人がある。科学的文化人とは、塩何グラムではなく、科学する生活態度を身につけた自由人のことである。

出典 『味覚馬鹿』

料理道具について

砥石は庖丁に刃をつける時に使え。使用後の手入れをちょっと怠けると、すぐに庖丁はさびのきものをきてしまう。たまねぎも、きものを脱がして食べるのだから、庖丁も、きものを着たまま使うな。

出典 『味覚馬鹿』

料理(焼き物)

さかなを焼く時は……、
 さかなというやつは、おもしろいものだ。じっと目を放さずに見つめていると、なかなか焼けない。それなのに、ちょっとよそ見をすると、急いで焦こげたがる。

出典 『味覚馬鹿』

客になって料理を出されたら、よろこんでさっそくいただくがよろしい。遠慮しているうちに、もてなした人の心も、料理も冷めて、不味くなったものを食わねばならぬ。しかも、遠慮した奴にかぎって、食べ出せばたいがい大食いである。

出典 『味覚馬鹿』

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