2020年5月16日 ... 陰性確認のために医学生・看護学生に検査をするということについて、感染症の
専門家たちはどう考えるのか。 政府の専門家会議委員で川崎市健康安全研究所
所長の岡部信彦さんは、「陰性の結果は感染していないと.
【1】なぜ一般市民はPCR検査をしちゃいけないの?
もし、みなさんがPCR検査を受けて「陽性」の判定を受けた場合、実際に新型コロナに感染している確率はどのくらいになるかご存じですか?
①99%
②70%
③6.5%
答えは③。
PCR検査が陽性になったとしても、実際に新型コロナに感染している確率はわずか6.5%、つまり15人中14人は、検査結果が陽性であっても、新型コロナではない、ということになります。
逆に、新型コロナに感染しているのに検査結果が陰性になる人が30%もいます。
まずは、日本に新型コロナの患者さんがどれくらいいるのか考えてみましょう。
2020年5月10日時点の日本の感染者は延べ15847人。ここから回復した8293人、死亡した633人を減ずれば、現段階で感染状態にあるのは6921人ということになります。
しかし、専門家の中にも、実際にはこの10倍から20倍の患者がいてもおかしくないという意見もあります。多めに見積もって、仮に20倍とすると、日本には138420人の感染状態の人がいるということになります。日本の人口は1.265億人ですから、913人に1人が感染状態にある可能性がある、ということになります。
。
ここでは計算しやすくするために1000人に1人が感染状態であると仮定します。
つまり、日本における新型コロナの「有病率」は0.1%ということになります。
病気の人を正しく病気であると診断できる確率を「感度」、病気でない人を正しく病気でないと診断できる確率を「特異度」といいます。
新型コロナのPCR検査の場合、感度は50~70%(ここでは70%で計算)、特異度は99%程度であると想定します。
では、神奈川県の伊勢原市で市民全員にPCR検査を実施すると仮定しましょう。
伊勢原市の人口は約10万人。有病率は0.1%ですから、10万人のうち100人が感染者で、残る9万9900人は感染していないということになります
10万人の市民全員にPCR検査を実施しました。
PCR検査の感度は70%ですから、100人の感染者のうち70人は陽性に出ます。一方、30人は陽性にはなりません。この人たちは感染しているのに検査結果は陰性なのです。
しかし、9万9900人の感染していない人も全員が検査を受けています。PCR検査の特異度は99%ですから、このうち1%(つまり999人)は病気でないにも関わらず陽性と診断されてしまうということになります。
10万人の検査を実施して、結果が陽性になるのは、実際に感染している100人のうちの70人と、感染していない9万9900人のうちの999人。合わせて1069人です。しかし、この中で実際に感染していたのは70人だけですよね。検査結果が陽性になった人のうち、わずか6.5%しか本当の感染者がいない、ということになります。
伊勢原市では、70人の感染者に加えて、実際にはコロナに感染していない999人も病院やホテルに2週間は隔離することになります。場合によってはアビガンなどの副作用の強い薬が投与されるかもしれません。そして、その家族も濃厚接触者とされ自己隔離、職場の人や友人たちも不安な思いをしなければならないかもしれません。さらに、自治体や国は、この999人分の隔離にかかる費用を負担しなければなりません。
※もし、特異度を99.9%まで高めることができたとしても、非感染者のうち0.1%、99人は陽性と診断されます。実際に感染していて陽性になる人が70人。非感染者の陽性率のほうが高くなります。
※特に感染者の多い東京でも、有病率は多く見積もっても0.3%を超えることはないと考えられます。(2020年5月10日時点での東京の感染者数4,810。回復者数はデータがありませんが、日本のデータに合わせて約50%(約2400人)が回復していると仮定。死亡者数が155ですので、現時点での感染者は概ね2250人と想定されます。この20倍とすると4.5万人。
人口が1400万なので0.03%。) この前提で計算した場合でも、検査結果が陽性に出た人の17.4%(約6人に1人)しか感染者がいない、ということになります。
つまり、PCR検査を大規模に実施すると何が起こるのか。
新型コロナに感染しているにも関わらず、検査結果が陰性に出た30%の人たちは、きっと安心して行動制限を緩め、結果として感染を拡大させてしまいます。
さらに、大規模な検査を実施することで、迅速に検査しなければならない人の検査に時間がかかってしまうかもしれません。
しかも、PCR検査は「その時点での感染状態」を調べるもの。
今がどうなのか、ということはある程度わかりますが、過去にどうであったのか、これからどうなるのかは全くわかりません。もし「感染していないことを確認したい」という安心感のために検査をするのであれば、定期的に再検査を続けなければなりません。そんなことをすれば、感染していないのに隔離されるケースが増えるばかりです。
つまり対象を選別しない広範なPCR検査は現段階では「百害あって一利なし」。
それでも大規模PCR検査にメリットがある、という方はぜひ教えてほしいです。
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