スボレキサントはオレキシン受容体に選択性が高く可逆的な拮抗薬
覚醒を促進する神経ペプチドであるオレキシンA及びBの受容体(OX1及びOX2受容体)への結合を可逆的に阻害することにより、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させ、睡眠を誘発すると考えられる。
私たちが覚醒状態があるときに働いているオレキシンという物質の働きをブロックし、睡眠状態へスイッチを切り替えていくようなお薬です。
1998年に発見された神経ペプチド。オレキシンAとオレキシンBがある。「食欲」を意味する「orexis」から名付けられた。
視床下部外側野に存在する神経細胞が産生しているオレキシンは、食欲や報酬系に関わるほか、睡眠や覚醒を制御することが知られている。
覚醒維持に関わるオレキシン受容体へ作用することで、寝つきをよくし、眠りを維持する働きがあります。 通常、不眠症の治療に用いられます。
覚醒の維持に重要な物質であるオレキシンの働きをブロックすることで、睡眠状態を促すお薬になります。
オレキシンは生理的に変動している物質で、日中は増加して夜間は減少しています。ベルソムラは睡眠と覚醒に関係する生理的な物質に働くことで、睡眠を促していくお薬になります。
本剤40mgを空腹時単回経口投与した後のスボレキサントは速やかに吸収され、投与後1.5時間 (1.0~3.0時間) で最高血漿中濃度 (Cmax) に達し、平均半減期(t1/2) は10.0時間であった
半減期が10時間以上と比較的長いため、米国では服用翌日の自動車運転時の安全性を重視し、開始用量は10mg、効果不十分な場合に15~20mgとしています。
日本では成人20mg、高齢者の場合は15mgです。日本でも10mg錠が追加発売されましたが、CYP3A4を阻害する併用薬がある場合のみで、用法・用量に変更はありません。
これまで一般的だった睡眠薬とは異なり、抑制系への作用がないのが大きな違いです。脳内における覚醒物質に作用して、過剰に働く覚醒システムを抑えることで睡眠状態へと導きます。
出典 薬+読(やくよみ)
今までの睡眠薬が抑制系に作用するのに対し、「ベルソムラ」は覚醒系に作用するというまったく異なる特徴を持っています。傾眠や高齢者の転倒リスクなど、今までの睡眠薬で多くみられてきた副作用が少ないのではないかと期待されています。
ベルソムラ®は覚醒中枢の働きを抑えることで効果を発揮します。脳が覚醒しようとするのを抑えることで、より自然な眠りに近い効果を発揮するのではないかと言われています。
これまでの睡眠薬は睡眠中枢の働きを高めることで効果を発揮していました。覚醒系の興奮の有無に関わらず睡眠を引き起こす、いわば無理やり眠りに導く作用です。
ベルソムラは、私たちの睡眠・覚醒の周期に関係する生理的な物質の働きを調整し、睡眠状態に仕向けていくお薬です。本来の眠気を強める形ですので、効果が人によっても異なります。
ロゼレムより効果の実感が早く、入眠作用も期待することができます。一方で強引さがないため、効果や副作用に個人差が大きいという特徴があります。
CYP3Aを阻害する薬剤 (ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等) との併用により、スボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠、疲労、入眠時麻痺、睡眠時随伴症、夢遊症等の副作用が増強されるおそれがあるため、これらの薬剤を併用する場合は1日1回10mgへの減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察すること。
CYP3Aを阻害する薬剤⇒ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等
なお、クラリスロマイシンやイトラコナゾールは禁忌である。
10mg錠の添付文書上の位置づけは、あくまでも高血圧治療薬ジルチアゼムなどの薬物代謝酵素CYP3A阻害剤との併用で、本剤の血中濃度が上昇してしまうのを避けることが目的です。
薬物相互作用以外の理由でも、「一時的に減薬して治療が継続できるよう10mg錠の開発が必要である」と、本剤承認時にPMDAが指摘しています。
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